親族・家族が亡くなった際の相続で重要なのが遺言書です。故人が誰に・どのように財産を遺すのかを記したもので、法律に定められた書式のものには法的効果が発生します。遺言書にはいくつかの種類があり、それぞれ扱い方が違ってきます。ここでは公正証書遺言という形式の遺言書について、概要や作成方法などを解説していきます。
公正証書遺言とは
公正証書遺言は公証役場で公証人に作成を依頼する形式の遺言書です。作成の際には相続人本人と公証人に加え、遺言書を作成したということを証明する証人2人以上が必要になります。遺言書には次項で触れるように3種類ありますが、公正証書遺言は法律のプロが作成を行うため、最も確実な遺言書と言われています。
遺言書の種類
遺言書には書式や作成方法によって3つの種類があります。
1.公正証書遺言
先にも触れたように、法律の専門家である公証人が作成するものです。公証人が、遺言者本人が述べる遺言書を書き留めて法律文書にまとめ上げます。その作業の際には前述の通り2人以上の証人の立ち会い必要になりますが、これは遺言者本人の遺言が正確に文書として作成されることを証明するという意味があります。
遺言者と証人は公証人の書き留めた内容に間違いがないかを確認するため、その場で閲覧して内容をあらためます。遺言者の真意と遺言書の内容に齟齬がなく正確に作成された場合は、遺言者と証人が署名捺印をします。
そして最後に公証人がしっかりと法的手続きに基づいて作成をしたことを付記し、署名押印を行って完成となります。
2.自筆証書遺言
遺言者本人の自筆による遺言書です。これまでの遺言書の作成は手書きでなくてはならず、被相続人の死後に自筆遺言書が見つかった場合は、相続人全員の立ち合いが必要でした。
しかし、40年ぶりの相続制度の法改正により、パソコンでの作成が可能になり、証人も不要になります。
詳しく知りたい方は下記記事をご参照ください。
3.秘密証書遺言
遺言者本人が記した遺言書に遺言者・公証人の両名が署名捺印をして作成します。公証人が関わりますが、公正証書遺言とは違い内容の作成はあくまで遺言者本人が行います。そのため遺言書の開封の際には家庭裁判所に行き、検認という手続きが必要になります。
これらの遺言の区別や探し方などについては、以下の記事をご参照ください。
公正証書遺言の作成に必要な書類
公正証書遺言の作成は法的な手続きのため、以下のようにいくつかの公的な証明書類などが必要になります。
- 遺言者本人の印鑑証明
- 戸籍謄本(相続人との続柄を明確にするため、ここでは謄本が必要です。)
- 証人全員分の住民票(もしくは証人の身元を明らかにする書面)
- 相続財産が明確にわかる通帳やメモなど
- 不動産の相続の場合は土地建物の登記簿謄本や固定資産評価証明書
- 遺言者本人の実印
- 証人の認印
なお印鑑証明・住民票・戸籍謄本については発行から3ヶ月以内のものでなければなりません。
公正証書遺言の作成にかかる費用
公正証書遺言の作成にあたってかかる費用については、法律家である公証人に依頼することから気になる方が多いはずです。
公正証書遺言の作成費用は主に公証役場の手数料です。作成の際にどのような内容を遺言とすべきかなどのサポートを法律の専門家に依頼する場合は、その報酬なども加算されることになります。
公証役場に支払う手数料
基本手数料は公正証書遺言に記す財産の額によって、以下の表のように決まっています。
財産の金額 | 手数料 |
〜100万円 | 5,000円 |
100万円超〜200万円 | 7,000円 |
200万円超〜500万円 | 11,000円 |
500万円超〜1,000万円 | 17,000円 |
1,000万円超〜3,000万円 | 23,000円 |
3,000万円超〜5,000万円 | 29,000円 |
5,000万円超〜1億円 | 43,000円 |
1億円超〜3億円 | 5,000万円増えるごとに43,000円にプラス13,000円 |
3億円超〜10億円 | 5,000万円増えるごとに95,000円にプラス11,000円 |
10億円超〜 | 5,000万円増えるごとに249,000円にプラス8,000円 |
なお、遺言書は財産を相続する人ごとに別々の法律行為としてみなされるため、複数の相続人がいる場合は個々に相続させる財産の価額から手数料を算出し、その合算が最終的な公正証書遺言作成の費用となります。
妻に3,000万円、2人の子供にそれぞれ1,000万円ずつ相続させる場合、
29,000円(妻)+17,000円(子供A)+17,000円(子供B)=63,000円
となります。したがってこの例では、公証役場に基本手数料として63,000円を支払うことになります。
最終的な公正証書遺言作成にかかる費用の計算式は以下のようになります。
公証役場の手数料+戸籍謄本などの取り寄せ費用+専門家への報酬(依頼する場合)=作成費用
公正証書遺言と遺留分
遺言書において重要なのが、相続人が必ず相続できると法律で定められた割合の遺留分です。これは相続人の権利として非常に強い力を持っており、たとえ1円たりとも相続させないと遺言書に記載した場合でも、相続人は自身の遺留分にあたる割合の請求をすることができます。この請求権を遺留分減殺請求権と呼びます。
前述の例えは極端なものですが、遺言書では遺留分を無視するような内容も有効となります。しかし、こういった場合は財産をめぐって後々のトラブルとなることが多いものです。そのため公正証書遺言を作成する際には、たとえば最低限遺留分に相当する財産だけは相続させるといった内容を記載しておくといったように、遺留分に配慮しておくことも大切です。
遺留分に関する基礎知識はこちらの記事でまとめています。
公正証書遺言のメリット・デメリット
ここまでは公正証書遺言の具体的な作成法や費用などについてみてきましたが、この項目では公正証書遺言を作成することのメリットとデメリットについて触れます。
公正証書遺言のメリット
公正証書遺言には次のようなメリットがあります。
法的効力のある遺言にできる
法律で定められた手続きに則って、専門家である公証人が作成を行うことにより、公正証書遺言は正式な法律文書としての効力を得ます。またしっかりと形式に沿って作成されるため、遺言の実行の際にトラブルが起こりにくくスムーズに相続を進めることが可能になります。
公証役場で安全に保管される
公正証書遺言は作成後に公証役場で厳重に保管されるため、紛失の心配がないのはもちろん、盗難や改ざんなどの危険もありません。
検認の手続きがいらない
公正証書遺言の場合は法律のプロである公証人が作成に関わるため、他の形式の遺言書と違い家庭裁判所での検認手続きが不要です。検認の手続き自体にも手間や費用がかかるため、相続人にこれらの負担を負わせることなく遺言書の実行ができます。
公正証書遺言のデメリット
公正証書遺言はそのメリットゆえに最も優れた遺言書と呼ばれることもあります。反面、その作成のプロセスでは次のようなデメリットがあります。
作成に時間と費用がかかる
公正証書遺言の作成には証人・遺言者・公証人の三者がかかわらなければなりません。特に証人を探したり公証人と相談をしたりといった部分で時間がかかってしまいます。
また手数料の項目で触れたように、安全・確実ゆえに作成には一定の費用が必要となります。
まとめ
公正証書遺言は3種類の遺言書の中でも特に安全性や確実性の面で優れた遺言書です。それゆえに手続きには手間や費用がかかってしまいますが、しっかりと法的手続きに則って作成を行うことにより、後々財産をめぐるトラブルが起こってしまうという自体を避けることができます。
作成を検討する際にはメリットとデメリットを比較しながら、現状に即した判断をすることが重要です。
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