有料老人ホームと認知症対応型グループホームはどちらも高齢者向けの施設ですが、どのような違いがあり、どのような人に適しているのでしょうか。ここでは認知症高齢者の受け入れ施設「グループホーム」の特徴やサービス内容、メリット・デメリット、費用、選び方などを解説します。
グループホームとは
グループホームは大きく分けて2種類
グループホームと呼ばれる施設は、大きく分けて2種類あります。1つは認知症高齢者向け施設。もう1つは精神障がいや身体障がい、知的障がいなどの障がいをもつ方のための施設です。今回は前者の認知症高齢者施設についての解説となりますが、インターネットで検索する際などは単純に「グループホーム」と検索するよりも「グループホーム 高齢者向け 認知症」などの情報を入力する事で、より目的に適した施設を検索する事が出来るでしょう。
グループホームと有料老人ホーム・介護施設との違い
有料老人ホームは高齢者全体が対象となり、自立している方から要介護5まであらゆる状態に対応した施設があります。定員も数名程度の小規模施設から100名超の大きな施設までさまざまです。「認知症対応型老人共同生活援助施設」とも呼ばれるグループホームは、認知症高齢者に対象を特化した共同生活住居であり、不穏な状態を安定させる、認知症症状の進行を遅らせるなどを目的として、それぞれの入居者の能力に応じて、料理や掃除といった役割を担いながら暮らしていくのが、有料老人ホームや介護施設と大きく異なる点です。
受けられるサービス
施設により異なりますが、入居者の能力に応じて、以下の様なサポートが受けられます。
- 見守り
- 機能訓練(リハビリ)
- 緊急時の対応
- 食事介助
- 口腔ケア
- 入浴介助
- 排泄介助
日常生活以外にも可能な限り自立した日常生活を送ることができるよう、支援や機能訓練などのサービスを受けることができます。レクリエーションでは施設独自の季節行事のほか、認知症に効果があるとされる園芸療法や手先を動かすものなどが多く取り入れられています。近年は地域交流を取り入れる施設も増えています。
グループホーム入居のメリット
認知症ケアの経験と知識をもつスタッフがいる
グループホームに常駐する職員は認知症ケアの知識と経験が豊富です。ほかの介護施設では「認知症受け入れ可」であっても、認知症の知識と経験が豊富な職員がいるとは限りません。
認知症の進行を遅らせたり緩和が期待できる
それぞれの入居者の能力に応じて、料理や掃除といった役割を担いながら暮らしていくことがグループホームの特徴となります。自分の役割を持ち続けることができることは、認知症の進行を遅らせたり、緩和させることにもつながります。
少人数で家庭的な雰囲気の中で生活できる
共同生活をする人数が1ユニット5~9名で、現在では新しく開設する際には1つのグループホームで2ユニットまでと規定されています。小規模な施設とすることで、認知症症状の進行を遅らせるなどの目的にむけた変化の少ない環境を保つようにされています。
住み慣れた地域に住み続けられる
立地も住宅地に近い場所にあることが多く、住み慣れた地域で近隣住民と交流しながら暮らせるという特徴があります。
市区町村で人員体制や設備基準が定められている
グループホームは地域密着型サービスであることから、市区町村から事業者の指定を受けなければ開設することができず、基準の人員や設備が定められているので、安心して利用することができます。
プライバシーが保てる
基本的にグループホームの居室は個室なので、認知症をもつ方にとって重要な“愛着のあるもの”に囲まれて安心できるプライベート空間を確保できます。
デメリット
規模が小さい
小規模とすることで、認知症症状の進行を遅らせるなどの目的にむけた施設である事はメリットである半面、デメリットにもなります。例えば入居者同士の相性が悪くても少人数のため調整が難しかったり、規模が小さいためスタッフも少なく、個別対応が難しいといったケースもありあます。
生活の自由度
有料老人ホームは身体状況にもよりますが、比較的自由度の高い生活を送ることができますが、グループホームの入居者は認知症の方なので、歩行がしっかりしていても道に迷う恐れがあることから、基本的に1人での外出はできなくなっています。
退去が必要となる場合がある
介護認定を受けながらも、ある程度の自立した日常生活を送れることが必要なため、医療・看護師の配置が義務付けられておらず、多くの施設では医療ケアへの対応力に限界があります。そのため、認知症の進行や健康状態の悪化により長期間の入院が必要・医療行為が必要・重度ケアが必要、などの状況になってくると、退居しなくてはならない場合があります。
ただし、近年では、グループホームの入居者も高齢化が進んでいます。高齢化に伴い、グループホームでも「医療体制」や「看取りサービス」の需要が高まってきています。特に「看取り」については対応が可能となる施設が増えてきています。
入居難易度が高めである
グループホームは小規模のため満室の施設が多く、すぐに入居出来ず、待機期間も長い場合があります。また施設と同じ地域に住民票がないと入居できません。
入居条件や費用などの疑問を解説
入居条件
医師から「認知症」の診断を受けていること
要支援2または要介護1以上の認定を受けている65歳以上で、医師による認知症の診断証明書が必要となります。
入居希望施設の地域に住民票があること
グループホームは、住み慣れた地域で生活することを目的とした「地域密着型サービス」の施設なので、施設と同じ地域に住民票があることが原則となります。
費用の相場
グループホームは介護保険制度上の施設ですが、具体的な規定はなく施設によって金額の差が大きいです。入居で必要な費用は、入居時にかかる「初期費用」と、入居後に毎月かかる「月額費」の大きく分けて2つです。さらに「月額費」は「日常生活費・介護保険サービス・サービス加算」の3つに分けられます。施設により異なりますが、おおよその相場は初期費用が10~20万程度(全くかからないところから100万円程のところもあります)、月額費用は15~30万円程度です。
生活保護でも入居が可能な施設もある
生活保護を受けている方でも入居は可能です。ただし「生活保護法による指定を受けているグループホーム」であることが条件となります。更に、指定を受けている施設でも一部の居室だけ対応している施設と施設全体が対応している場合があるため、入居難易度はかなり高めにはなるかもしれません。在宅サービスを利用している方はケアマネジャーに、それ以外の方は生活保護受給担当のケースワーカーに、グループホームへの入居を希望していることを相談してみましょう。
グループホームの選び方
施設選びのポイント
グループホームは施設によりサービス面、費用面でもかなり差がある事が解りました。グループホームを選ぶ際は、以下の点について施設間の比較検討を行い、希望や予算に合う施設を選択しましょう。以下ポイントの一例です。
入居費用
グループホームの費用相場はかなり幅が広いので、無理のない資金計画のもと、長期にわたって継続して入居できる施設を選びましょう。
介護体制
グループホームは小規模施設なので、他の老人ホームや介護施設に比べ、スタッフ数が少ない傾向があります。認知症が進行している方はより細やかなフォローが必要になりますが、スタッフが十分にそろっていなければそうもいきません。スタッフの数に問題がないか確かめましょう。
医療体制
持病を持っている場合、必要な医療サービスを将来的にわたって受け続けることができる施設を選ぶ必要があります。
私物の持ち込みについて
認知症をもつ方は、記憶や周囲とのつながりが途切れ途切れになるため、記憶に残りやすい「昔からよく知っている人や物」に安心を感じます。より安心した環境づくりのためにも、これまで大切にしてきた私物などを持ち込むことがどの程度可能かどうか確認しておきましょう。
入居者と介護スタッフの表情や雰囲気
当然のことながら、入居者の表情が穏やかであれば、認知症の状態が安定し、日々落ち着いて生活できているといえます。不快な表情であっても、たくさん表情を交わしあっているかどうか、は環境への信頼感があるサインとも言えます。また、それに対しての介護スタッフの表情もごまかしがなく対応しているかなども、見学や体験を利用し確認してみましょう。
見学や体験入居をしてみよう
資料やホームページだけでは実際の施設の雰囲気や生活の様子を確認することはできないので、是非見学や体験入居をしてみましょう。複数を見学すると、それぞれの特徴も明確になり、入居する方にあった施設を選ぶことができます。入居したら、どんな生活を送ることになるのか、入居後に後悔しないためにも出来れば実際に体験入居してみることをおすすめします。
体験入居方法
体験入居は施設に直接申込をします。空室がなければ利用ができないので、事前に確認が必要です。なお、体験入居は、施設に直接保険適用にならないため、費用や利用日数なども施設により異なります。利用期間は、長いほうがその施設にあうか判断がしやすくなりますので出来れば数日利用してみると良いでしょう。
まとめ
グループホームは、入居者本人は勿論、認知症をもつ家族を介護する方にとって心強い味方であり、認知症の高齢者が入居を検討する施設としては、最初に名前が上がります。グループホームの数は増加傾向にありますが、少人数制のため気に入った施設が見つかっても、すぐに入居できるとは限りません。入居まで時間をかけたくなければ、どこか1つの施設にこだわるのではなく、なるべく多くの施設をピックアップしておき、その中から選択するという心構えも必要です。
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