相続する財産は、預現金や不動産などだけではなく、コレクション・家財・雑貨など遺品として引き継ぐものも多くあります。メルカリなどの便利ツールも増え、以前に比べて遺品整理の際に不要な遺品を売却するケースは年々増えています。相続から何年かしたあとに、「遺品を売ったら思わず高額になった」といった経験がある方もいるのではないでしょうか。そういった場合に気になるのが税金です。ここでは相続後に遺品を売却したときの税金について解説します。
遺品にかかる税金とは
遺品と遺産の違い
一般的に遺品とは「故人が残した品物」を指します。たとえば家具・貴重品・衣類・楽器・書籍などです。かたや現金や不動産といった価値ある資産は「遺産」として扱われるため、遺品とは区別されます。遺産に対しては課税対象となることはご存じの方がほとんどだと思いますが、遺品を売った際には課税対象となるのでしょうか。
課税・非課税の違い
遺品を売って得たお金に税金がかかるかどうかは、大きく分けて次の3つの要素で変わります。
- 遺品の種類
- 遺品の売却価格
- 遺品を売って得た所得の合計
上記の要素を踏まえ、課税対象か、非課税対象となるかがポイントとなります。「課税」とは、国家や地方公共団体が、財源として人民から強制的に徴収する金銭のことで、「税金が課せられる対象」ということになります。「非課税」の「非」は「それにあたらない」を表す接頭語となり、「課税にあたらない」=「税金が課されない対象」を意味することになります。課税・非課税対象のポイントを以下解説していきます。
生活用動産かどうか
生活用動産(せいかつようどうさん)とは、生活に必要とされる動産(財産)のことです。売った遺品が生活用動産の場合、基本的に売却して得たお金に税金はかかりません。この生活用動産とは、その名のとおり「生きていくために一般的に必要とされるモノ」のこと。例えば次のようなモノは、生活用動産に当たります。
- 一般的な家具(テーブル、たんす等)
- 一般的な家電(冷蔵庫、洗濯機等)
- 日常生活に使用するための車両類(自転車、自動車等)
- 日常生活に使用するための衣類
生活動産として非課税対象にみなされるポイントとしては「生きていくために一般的に必要とされるモノ」ということになります。こういったケースの遺品を売っても、原則として税金はかからないとされています。
高級品は注意
上記の「生活用動産」に分類される遺品でも、桁違いに高級なものは課税の対象となる可能性があります。家具や自動車でも、高級なものは「一般的な生活で必要となるモノ」とは見なされず、このような遺産を売却して売却額が一定を超える場合は所得税の課税対象となりますので注意が必要です。以上を踏まえると、着物や美術品類にも同様に高値がつく可性があります。自分でも高級品と判断がつくものは遺品整理の際に気を付けておきましょう。生活動産に対して課せられる税金に関して、国税庁は以下のように定めています。
家具、じゅう器、通勤用の自動車、衣服などの生活に通常必要な動産の譲渡による所得です。しかし、貴金属や宝石、書画、骨とうなどで、1個又は1組の価額が30万円を超えるものの譲渡による所得は課税されます。
上記の基準に該当する遺品を売却した際、その金額が30万円を超えると課税対象となりますが、課税額は遺品を売却した際の総額ではなく、品物それぞれの売却額をもとに計算されます。
遺品整理の特別控除額
遺品整理の売却時に課せられる税金については、「特別控除額」が設けられています。現在、遺品整理で、税金の支払いが免除される控除額の上限は50万円と設定されています。例えば、遺品の中にある美術品と着物が、それぞれ40万円と50万円で売れたとします。前述した通り、遺品整理で売却した場合、それぞれの品物に対し30万円までは非課税となりますので、課税される金額は10万円と20万円になります。
金・地金は課税対象となるので注意
金地金(ゴールドバーやインゴット)などを売却した場合も譲渡所得としては扱われますが、一般的宝飾品とは違って、「金(地金)」は、売却額がいくらで売れた場合でも課税の対象となり「売却額30万円以下なら非課税」の原則から外れてしまいます。なお、「金の指輪」や「金のネックレス」の場合は宝飾品扱いなので、「売却額30万円以内」の非課税対象になります。同じ金でも「地金」と「ジュエリー・宝石類」では扱いが違うので、注意が必要です。
遺品整理で売却する前の注意点
相続済か
現金や不動産などの資産相続に比べて、物品の遺品については相続手続きを軽く考えてしまいがちです。しかし物品の場合でも、相続についての法律は適用されます。つまり原則的には「相続が決まっていない遺品は、勝手に売ったり処分はできない」のです。親族内で相続の話が決まらないうちに、早まって宝石や書画骨董品を売却処分してしまい、大きなトラブルとなるようなケースは非常に多いのです。最悪の場合、裁判・賠償というレベルのトラブルに発展することもあるので十分に注意しましょう。特に高売却額が見込まれる遺品や、希少でプレミアが付きそうな遺品については要注意です。親族内で相続について十分に話し合い、全員が納得してから遺品を売却処分することをおすすめします。
相続放棄したら遺品は売れない
故人に目立った遺産が無く、反対に債務(=借金)が残されている場合には、相続放棄を考える方が多いことでしょう。ここで気をつけなくてはならないのが、「相続放棄をした人は遺品は売ることができない」という点です。相続放棄という法律の上では「この遺品(借金)は相続しないけれど、こちらの遺品(財産)は相続する」といった選択をすることはできません。すべての債務と権利を相続するか、日用品等のすべてを含む遺品(財産)に対する権利をすべて放棄しないとならないのです。遺品の売却処分を行うと「故人の財産の処分を行った=財産の相続をしている」と判断され、法的に相続放棄ができないとみなされるケースもあるので注意しましょう。
遺品整理で売却する前のポイント
納税相談・確定申告は必ずすべし
遺品の売却額が思いもよらぬ高額になった場合は、早めに税金対策に取り掛かった方が良いでしょう。「計算方法がわからない」「納税するレベルなのか判断がつかない」という時には、とにかく税務署で相談をしてみましょう。税務署では税金に関する相談を無料で受けてくれます。一般的な遺品の売却には税金の支払いが発生することはほとんどありませんので、相談をしたところ特別控除が効いた、税金を払わなくても大丈夫だったというケースも多いです。反対に曖昧なまま確定申告をせずに放置をしていると、「脱税」とみなされてしまいます。一回脱税扱いになってからの追徴課税は重く、遺品売却以外の相続についてもチェックが厳しくなります。遺品が高額で売れた時に確定申告をしないことは、デメリットしかありません。
専門業者を通して遺品整理をする
遺品の売却ではそれぞれの品により、よりメリットのある売却方法もありますが、非常に手間もかかります。遺品整理も含め様々な手間を削減したい場合は遺品整理業者などの専門業者に依頼をすることをおススメします。遺品整理業者の中でも遺品整理士の在籍する業者であれば法律的観点からも遺品の整理・売却の相談、提携の税理士に相談することも可能な業者もありますので安心です。売却費用が安くなってしまう可能性もありますが、専門の知識をもつプロに相談できるので安心です。
遺品を売るタイミングを見逃さずに
遺品の種類によっては、長く手元に置いておいた方が税制上優遇されるものもあります。しかし税金が安くなるからといって、遺品を手元に長期保管するのはあまり良い手ではありません。例えば衣類ならシーズンや流行りがあったり、家電なら型式が新しい方が高く売れる可能性は高いです。基本的には一般的な生活品類は売却しても税金が発生しないので、「高く売るタイミング」の方を優先させた方が最終的には良い結果となるでしょう。
まとめ
遺品の中には骨董品や美術品など価値ある資産が眠っている可能性があり、いざ売却してみたら遺品が遺産となるほどの高額となり、課税対象となってしまう場合もあります。もし遺品整理にあたり、税金面で気になる点があれば税務署や税理士に相談し、適切な申告を行いましょう。
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