親族が亡くなったあとにトラブルとなりやすいのが、遺産分割です。その割合や方法など、相続人どうしで揉めてしまい、なかなか協議がまとまらないということも少なくありません。今回は、そんな遺産分割について、どんな流れ・方法で行うのか、それぞれの相続人の分割割合などをわかりやすくまとめました。遺産分割について困っている、事前に情報を得ておきたいという方はぜひ参考にしてください。
遺産分割とは?
遺産分割とは、亡くなった人が残した財産を残された人で分割することです。遺言書が残っている場合はそれに従いますが、残されていない場合には相続人の話し合いによって、具体的に決定していきます。民法によって相続人が誰となるのか、その割合がどのくらいかというルールが定められており、遺産分割は基本的にそれに則って行われることになります。
遺産分割の流れ
遺産分割は、下記のような流れで行われます。
- 遺言書の有無を確認
- 相続財産の調査
- 相続に関係する人を確定
- 遺産分割協議(まとまらない場合は遺産分割調停→遺産分割審判)
- 遺産分割協議書にまとめる
遺産分割協議の際に関係する人は3種類
遺産分割に関わる必要がある人は、全部で3種類に分けられます。それぞれ、どのような人が関与しなければならないのか、説明していきましょう。
法定相続人
遺産分割協議に関わる人としては、まずは民法で法定相続人とされている人が挙げられます。被相続人の配偶者は常に相続人となり、それ以外は以下のように順位が定められています。
- 子供
- 親
- 兄弟姉妹
代襲制度とは、子供が先に亡くなっているなどの理由で相続できない場合、孫が代わりに相続できるというものです。第二順位の親には代襲制度はありませんが、親がいない場合には直系尊属である祖父母・曽祖父母が相続権を持つことになります。第三順位の兄弟姉妹の場合は、甥・姪の代襲相続が可能です。
相続分の譲渡を受けた人
法定相続人のほか、相続分の譲渡を受けた人も遺産分割協議の対象となります。相続分はほかの共同相続人や、そうでない人に譲渡することが可能です。これによって、譲渡を受けた人にも遺産分割協議が必要となります。
包括遺贈を受けた人
包括遺贈を受けた人も遺産分割協議の対象となります。
遺贈とは、遺言書によって相続人に財産を与えることを言います。遺贈には、包括遺贈(全部または一定の割合で遺贈すること)と特定遺贈(相続する財産を指定すること)の2種類があり、包括遺贈に関しては遺産分割協議を行わなくてはなりません。
遺産分割の割合は?
遺言書がない場合に遺産分割をどのように行うかは、民法によって定められています。
- 配偶者と子供の場合:配偶者1/2、子供1/2
- 配偶者と親の場合:配偶者2/3、親1/3
- 配偶者と兄弟姉妹の場合:配偶者3/4、兄弟姉妹1/4
法定相続分はあくまで目安
この民法によって定められた法定相続分は、あくまで遺産分割を行う際の目安です。
そのため、相続人が納得できない場合には、法定相続分と異なる割合で遺産分割を行っても問題ではありません。ただしその場合、相続権を持つ人が全員納得する必要があります。
相続したくない場合は相続放棄
法定相続人であったとしても、相続したくない場合には相続放棄をすることができます。多額の借金が残されていた場合など、プラスなる財産よりもマイナスになる財産の方が多いときに行われることが多いです。
寄与分で相続分が増える可能性も!
遺産分割協議をする際に、寄与分の主張をすれば法定相続分以上の割合で相続できる可能性があります。
この寄与分とは、被相続人の生前、財産の増加や維持に特別に貢献していたという場合に認められるもののことです。寄与分が認められた場合、その寄与度に応じて相続分の割合を増やすことができます。
これは共同相続人に対して認められるもので、誰に対しても適用されるわけではありません。この寄与分が認められるパターンにはいくつかの種類があります。
- 家事従事型:被相続人が経営していた会社など、家業を手伝っていた場合
- 金銭出資型:被相続人に金銭的な援助をしていた場合
- 療養介護型:被相続人を相続人が介護していた場合
- 扶養型:相続人が被相続人の生活の面倒を見ていた場合
- 財産管理型:被相続人の財産を相続人が管理していた場合
遺産分割が必要ない2つのケース
遺産分割をする必要がないケースもあります。ひとつは相続人がいない場合、もうひとつは相続人が1人しかいない場合です。
- 相続人がいないケース
相続人がいない場合は、相続財産管理人が選定され、相続人や相続債権者を探す手続きが行われます。13か月以上行っても相続する者がいない場合、その財産は最終的に「国庫(財務省)」に帰属することと民法で定められています。 - 相続人が1人しかいないケース
相続人が1人しかいない場合は、その人がすべての財産を相続することになりますので、遺産分割は必要ありません。
遺言書で遺産分割を回避
被相続人が生前に遺言書を作成していれば、相続はそれに従わなくてはなりません。そのため、遺言書があればスムーズに遺産分割ができます。
遺言書が残っていた場合、勝手に開封してはいけません。家庭裁判所の検認を受ける必要があります。これは、遺言書の偽造や改造を防止することと、相続人に遺言書の存在を知らせることが目的です。被相続人が公正証書遺言を作成していた場合、家庭裁判所の検認を受ける必要はありません。最寄りの公正役場で遺言書の有無を確認してもらったり、日本公証人連合会の遺言書検索システムで検索したりすることも可能です。
遺産分割におけるトラブルを避ける方法として、生前に遺言書を作成してもらうことも選択肢として検討する価値はあるでしょう。
遺産分割の4つの方法
遺産分割を行う方法は、以下の4つがあります。
- 現物分割
現物分割とは、預金、土地、建物など、財産となるものを個々でそのまま分割する方法のことを言います。たとえば、配偶者には預金、長男には不動産、長女には株式、などといった形で財産を現物そのもので分けるのが、現物分割です。 - 代償分割(代償金を支払う)
代償分割とは、1人の相続人が多く相続する代わりに、別の相続人にお金を支払う方法になります。たとえば、長男が建物を相続し、その代わりに長女・次男に200万円ずつ払う、といった形で行われるのが代償分割です。 - 換価分割
換価分割は、土地や建物などの遺産を売却して、その代金を分割する方法です。亡くなった親が所持していた自宅などの不動産を売却し、そのお金を子供で分ける、といった場合が換価分割に当たります。 - 共有分割
共有分割は、財産の一部または全部を、複数の相続人が共同で所有する方法です。不動産などを配偶者や子供と共同で所有するなどの場合が、この共有分割に当たります。この場合、売却したいときに全員の同意が必要になるなどトラブルになりやすいため、注意が必要です。
不動産の評価と遺産分割
現物分割以外の方法で遺産分割を行う場合、被相続人が所有していた不動産の評価額が非常に重要となります。不動産を評価する方法は、主に以下の3つです。
- 公示価格(地価公示価格):毎年3月に発表される地価に基づいて評価する方法
- 固定資産税評価額:固定資産税、登録免許税、不動産取得税などを課税する基準とするために定めた価格をもとに評価する方法。公示価格の7割ほどになるよう定められている。
- 相続税評価額(路線価格):毎年8月上旬に発表される、相続税・贈与税を課税する基準となる額に基づいて評価する方法。公示価格の8割ほどになるよう定められている。
遺産分割はトラブルに発展する可能性も!?
遺産分割は、相続人の間でトラブルに発展することも少なくありません。たとえば、被相続人の長女が特別受益を受けていた場合、その分を考慮して遺産分割を行う必要があります。特別受益とは、生前に被相続人から特別に利益を受けることを言います。この特別受益が認められると、利益を受けていた分を財産取得分から減額しなくてはなりません。これが発覚した場合に、トラブルが起こることがしばしばあります。
また、次男が母親の介護をしていて寄与分を主張した場合なども、トラブルとなりがちです。仕事に行くことなく介護に専念していたような場合だと認められますが、仕事の合間に介護をしていたり、デイサービスなどの援助を多く受けていた場合には認められないことも多いです。当事者の間で解決できない場合には、専門家の手を借りたり、遺産分割調停を申し立てたりすることも選択肢として検討する必要があるでしょう。
相続人が認知症の場合
相続人の中に認知症の人がいる場合、その人を無視して遺産分割協議を行うことはできません。行ったとしても、その協議は無効となってしまいます。認知症が軽度で意思表示をすることが可能な場合は、本人に遺産分割協議に参加してもらう必要があります。重度で本人が意思表示をするのが難しいという場合は、家庭裁判所に申し立てて成年後見人を選定してもらい、その人が遺産分割協議に参加することになります。
相続人が未成年者の場合
相続人の中に未成年者がいた場合、法定代理人が遺産分割協議に参加することになります。通常、法定代理人となるのは親権を持つ親です。しかし、親も相続人となる場合は利益相反行為となってしまうため、法定代理人となることは法律上認められません。その場合、家庭裁判所に申し立てて特別代理人を選定する必要があります。この特別代理人は、誰でもなることが可能です。
よって親族を選ぶことも可能ですが、専門家を選んだ方が公平性を保ちやすくなります。
まとめ
遺産分割は、状況によってトラブルが起こることも多いです。事前に遺産分割の流れや相続割合、分割方法を知っておくことで、冷静に対処しやすくなります。また、生前に被相続人に遺言書を作成してもらっておくことで、トラブルを避けることも可能です。ご紹介した情報も参考にしながら正しい知識を身につけておきましょう。
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