「結婚式の衣装」というと、女性側に注目が集まりがちです。もちろん女性の衣装もすてきなのですが、男性の衣装には男性の衣装で良さがあるものです。ここでは「男性の礼服」に注目し、新郎側と参列者側、それぞれの装いについて解説していきます。
【新郎側】男性の礼服の基本とは
男性の礼服・正装も、現在は多様化しています。特にその人によく合った礼服・正装を選べば、人の目をひく格好いい姿になるでしょう。男性の礼服・正装は数多くありますが、基本的には下記の3つに分けられます。
- タキシード
- 和服
- 職業に準じた儀礼服
それぞれ見ていきましょう。
洋装
男性の洋装は、「モーニングコート」「フロックコート」「ディレクターズスーツ」「燕尾服(えんびふく)」「タキシード」に大別されます。ちなみに本来は、「モーニングコートとフロックコートは昼までの正装であり、ディレクターズスーツは昼までの準礼装である。そして夜の正装は燕尾服であり、準礼装がタキシードである」とされています(ただしタキシードは正装に分類されることもある)
正装 |
準礼装 |
|
昼 |
モーニングコート
フロックコート |
ディレクターズスーツ |
夜 |
燕尾服
(タキシード) |
タキシード |
なお、現在の日本の一般的な結婚式においては、「昼にタキシードを着てはならない」などのような厳密な定めはほとんどありません。自分たちの好みで選んでもよいでしょう。洋装の場合は、黒か白のいずれかを選ぶことになります。黒の方は日本人になじみやすく真面目な印象になりますが、白の場合はさわやかで若々しい印象になるでしょう。
和服
結婚式で新郎が着用する和服は、もっとも格式の高い「黒五つ紋付の羽織袴」でしょう。背中と両袖、両胸の5か所に家紋が入ったこの装いは、もっとも正式なものです。ちなみに「自分の家の家紋が分からない」「自分用の五つ紋の着物など持っていない」という人の場合は、レンタルすることになるかと思われます。この場合は、使用に制限のない「通紋(つうもん)」の入ったものを利用することになります。また五つ紋よりは格が落ちる三つ紋の衣装を着ることもできます。なお男性が和装を選ぶ場合は、新婦の和装の格(白無垢ならば五つ紋のものを選ぶなど)と合わせることが重要です。
ちなみに新郎の着用する和装は意外とカラーバリエーションが豊富です。黒色のものだけでなく、灰色のものや紺色のものなどもあります。
職業に準じた儀礼服
職業によっては、「儀礼服(ぎれいふく)」が存在します。特に有名なのが自衛隊・自衛官のものですが、警察官や消防士なども儀礼服で結婚式を挙げることもあります。胸から肩にかけて紐が配された制服を着こみ、制帽を頭に、サーベルを腰に下げるのが一般的で、非常に凛とした美しい姿になります。ちなみに女性が自衛隊・自衛官の場合は儀礼服は着ずにドレスを選ぶことが多いようですが、職場恋愛などで「新郎も新婦も自衛官である」という場合は2人ともが儀礼服をまとうこともあります。ほかの職業には見られない厳かな雰囲気になるので、該当の職業に就いている方はこれを選んでもよいでしょう。
新郎の装いは、新婦の装いほどではないにせよバリエーションは豊富にあります。好みに応じて選び分けていくとよいでしょう。
【参列者側】参列する側の衣装について
ここまでは「新郎の装い」について解説してきましたが、ここからは「参列する側の装い」について解説していきます。
一般参列者
まず取り上げるのは、「一般参列者として結婚式に参加する場合の装い」です。
同僚や友人などの立場で参加する場合は、ダークス-ツやブラックスーツを選ぶとよいでしょう。ダークスーツは「略礼装」にあたるもので、ダークグレーなどの色でも良いとされています。ブラックスーツは「準礼服」に位置するものであり、昼夜問わず、また友人・同僚の立場だけでなく親戚の立場でも着ることができるものです。新しく買い求めるのであれば、ブラックスーツがよいでしょう。
なお、「参列者の女性は、白のドレスは避けるべき」とされているように、男性参列者も白いスーツは避けるべきです。ただし「黒で統一された装い」も葬儀を連想させてしまいますから、「ネクタイは明るい色、ベストも黒以外の色にする」という気遣いはしたいものです。シャツは白いシャツが無難ですが、友人・同僚の立場であるなら、パステルカラーのシャツを選んでもよいでしょう。ビジネススーツは避けますが、例外的に、学生や社会人になりたての場合は許容されることがあります。この場合は、ネクタイピンなどの小物でハレの日にふさわしい華やかさをプラスしましょう。
スピーチをする人
スピーチをする場合は「主賓」としての扱いになるので、略礼服は避けます。夜ならばタキシード、昼ならばブラックスーツを選ぶのがよいでしょう。ただし、「タキシードは持っていないが、ブラックスーツは持っている」という場合は、ブラックスーツで問題ありません。ちなみにタキシードの場合はベルトを通すための穴がありません。そのため、サスペンダーなどを利用してパンツを止めることになります。ネクタイは、蝶ネクタイを利用してもよいでしょう。「結婚式は黒色のネクタイはNG」とされていますが、夜の結婚式の場合は黒の蝶ネクタイが良いとされています。昼の結婚式の場合は、紺色や深い赤色などを選ぶのがおすすめです。なお昼間の結婚式ならば、蝶ネクタイに遊び心を加えて、水玉模様のものなどを選ぶのも面白いものです。ちなみにチーフは白色が定番ですが、灰色のものなどを選んで遊び心をプラスしても構いません。
【補足】夏の礼服
結婚式は、春夏秋冬を問わずに行われます。夏場にガーデニングパーティー形式で結婚式を行う……ということも珍しくありません。
クールビズが叫ばれ始めて久しい現在ですが、結婚式の場合は、たとえ真夏のガーデニングパーティーであってもジャケットの着用が必須です。カジュアルな結婚式では式の最中にジャケットを脱いでも許容されることがありますが、原則として避けるべきです。また、カジュアルな結婚式や二次会以外では、ネクタイも外してはいけません。なお、クールビズの現場ではよく使われる半袖シャツもNGです。ただ、こうなると「とにかく暑い!」という状況に陥りがちです。そのため、上記を踏まえつつも、快適に過ごせる方法を模索するべきです。大前提となるのが、「秋冬用のスーツを着ない」ということです。風通しの良い夏用のスーツを選びましょう。これだけで格段に涼しくなります。また、特に暑い日でジャケットでの参加が厳しい……と言う場合は、ベストの着用を考えてください。ベストはジャケットの下に着るものですが、ベスト+シャツの装いを取ることもできます。ベストを着ておけばジャケットを着なくても失礼にはなりませんから、この組み合わせをぜひ試してみてください。また、少しでも快適に過ごせるようにするために、「現地に着いてから着替える」という方法をとっても構いません。
男性の結婚式での装いは、女性のそれに比べてあまり話題に上ることはありません。ただ男性の衣装には男性の衣装ならではの格好良さがありますから、パートナーや家族とともに自分好みの1枚を探していくのもよいでしょう。
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