一周忌の法事・法要の後にお渡しするものとして、「引き出物」があります。ここではこの「一周忌後にお渡しする引き出物」を取り上げて、
- 一周忌に渡す引き出物とは何か、その意味と渡すタイミング
- 一周忌の引き出物に関するマナー
- 一周忌の引き出物には何を選んだらいいか、目安となる金額はいくらくらいか
について解説していきます。なおここでは、特記すべき事情がない限り、主に「仏教の一周忌の引き出物」について取り扱います。
一周忌の引き出物、いつ渡す?
「一周忌の引き出物」とは、「一周忌の法要が終わった後に、参列した人に渡す返礼品」のことを差す言葉です。なお「引き出物」という言葉は「結婚式などの慶事でお渡しするもの」という印象を強く抱かせるため、「『引き出物』という言い方は間違っている」とする説もあります。ただ実際には、法事のときにお渡しする返礼品も「引き出物」とすることが多いため、この言葉を使っても問題はないと考えられます。なおこのあたりは地方差があるほか、専門家によっても見解に違いがみられ、「『引き物』とするのがよい」などのような説もあります(ここでは「一周忌の引き出物」という表記に統一します)。
一周忌の引き出物は、「参列してくれた人へのお礼」という意味を持ちます。一周忌に足を運んでもらい、不祝儀を渡してくれた人に対して、喪家がお礼の気持ちを込めて贈るのが一周忌の引き出物です。一周忌の引き出物をお渡しするタイミングは、「最後、参列者を見送るとき」です。ただこれを詳しく理解するためには、一周忌の流れを把握しておかなければなりません。家や地域によって異なりますが、一周忌はおおむね、以下のような流れを取ります。
- 集合
- 僧侶入場~一周忌法要の開始(読経や焼香など)
- お墓に移動~お墓のお参り(まだ納骨が終わっていない場合は、このタイミングで納骨式を行い、納骨をすることもある)
- 移動
- 会食
- 解散
一周忌の引き出物をお渡しするのは、6のタイミングです。お帰りになる参列者お一人おひとりに喪主が直接手渡す場合もあれば、参列者の座っている椅子の下やその後ろに一周忌の引き出物が置かれている場合もあります。なお現在は、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響や、葬儀・法事の縮小化の波もあり、会食を行わない場合もあります。その場合は、お墓参りが終わった後に、喪主から参列者に対して一周忌の引き出物を直接手渡しするかたちになるでしょう。」
一周忌についてはこちらの記事も参考になさって下さい。
一周忌の引き出物に関するマナー
ここからは、一周忌の引き出物に関するマナーについて解説していきます。
表書きについて
一周忌の引き出物には、「掛け紙」を掛けます。なお掛け紙は「のし紙」「のし」とも言われることがありますが、のしはもともと慶事に使われる言い回しであるため、下記では「掛け紙」の表記に統一します。ただしこのあたりも、地域や専門家によって多少見解に違いが見られます。
掛け紙の上部には、「粗供養(そくよう)」「志(こころざし)」とします。なお、一部の地方では「茶の子(ちゃのこ)」としたり「一周忌」としたりすることもあるようですが、全国的に使われているのは「粗供養」「志」であるため、これを使用するのが無難でしょう。水引の下には、喪家の苗字もしくは喪家のフルネームを記します。なお、表書きを記す際の墨の濃さですが、これは基本的には濃い墨を使います。一部の地域では薄い墨を使っても良いとされていますが、薄墨はそもそも「あまりの嘆きで、墨をする力もありません」「悲しみの涙で、墨が薄れてしまいました」のような意味があるため、特に死の衝撃が強いとされる四十九日までしか使わないのが一般的だからです。
水引について
水引は、「黒白」もしくは「双銀の結び切り」のものを選びます。これは「二度と繰り返してほしくない弔事」に掛けるものであり、葬儀のときに渡される香奠に掛けられる水引と同じものです。ただし水引の種類にも地方差があり、一部の地域では黄白の水引を使うこともあります。迷ったのならば、黒白もしくは双銀のものを選ぶとよいでしょう。
なお仏教の場合は、水引以外にも、蓮の花が印刷された掛け紙を使うことがあります。蓮の花はブッダ(ゴーダマ・シッダールタ、仏様)と深い関わりがある花だからです。神道やキリスト教の追悼儀式のときにはこれは用いません。
挨拶状について
一周忌の引き出物は、基本的には「一周忌法要に参列してくれた人に、手渡しで渡すもの」です。そのため、挨拶状をつける必要はありません。挨拶状は、その性質として、「本来は直接会ってお礼やご挨拶を申し上げるべきところを、書面で失礼します」という意味を持つものだからです。ただし、「一周忌法要に招いたが体調不良で参列できないとお断りされた人から、一周忌法要の不祝儀を頂いた」という場合は、挨拶状を添えて一周忌の引き出物をお送りすると丁寧です。
僧侶に渡す?渡さない? 夫婦の場合はどうする
一周忌の引き出物は、基本的にはご僧侶にもお渡しするようにします。ただこのあたりは、地域や宗派によっても多少異なります。一周忌の引き出物をご僧侶に渡さないという場合は、お布施を多少多くするとよいでしょう。ちなみに一周忌のお布施の相場は30000円~50000円程度がひとつの目安です。
なお、一周忌の法要は、「ご家族・ご夫婦で参列する」というケースも多いかと思われます。この場合の一周忌の引き出物は、原則として1つで構いません。しかし「すでに別所帯を構えていて、不祝儀も親世代・子世代から別々に頂いた」という場合は、一周忌の引き出物を2つ別々にお渡しするようにします。一周忌の引き出物は、「渡さなければならない人にいきわたらなかった」となると、大変失礼にあたります。そのため、念のため1~3個程度の予備を用意しておくことをおすすめします。
一周忌の引き出物、どんなものを選べばいい? 金額はどれくらい?
一周忌の引き出物でお渡しするものは、香典返しのときと同じで、「キエモノ」「好みに左右されにくいもの」「賞味期限が長いもの」「カタログギフト」などが望ましいでしょう。石鹸や洗剤などのキエモノは、「使えば終わりであるため、どんな人にも贈りやすい」といったメリットがあります。また、好みに左右されにくいものとして、「無地のタオル」などがあります。これは厳密には「キエモノ」ではありませんが、これらを選んでも問題はありません。海苔やお茶、調味料などの詰め合わせセットも、賞味期限が長くおすすめです。また現在は個別包装の焼き菓子が選ばれる場合もあります。「参列者のご年配の方や、遠方から足を運んでくださる方が多い」「参列者の世代がばらばら」という場合は、カタログギフトにしてもよいでしょう。カタログギフトはかさばりませんし、受け取った人がそれぞれ好みに応じて自由に物を選べます。
一周忌の引き出物の金額に関しては、3000円~5000円程度がひとつの目安とされています。これは、「頂いた不祝儀の2分の1~3分の1を返す」という「半返し」の考え方が基本となっているからです。一周忌法要の不祝儀の目安医が10000円程度であることから、一周忌の引き出物はこれくらいの金額を目安にするとよいでしょう。ただし、地域によっては7割返しで対応することもあります。
一周忌の引き出物は、「故人を思い、弔う気持ちを表してくれたことへのお礼」を表すためのものです。失礼のないように選びたいものですね。
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