冠婚葬祭では非常に大きなお金が動くことになります。場合によっては数百万円の出費になることも珍しくありません。そして、冠婚葬祭のなかでも特に「葬」は、突発的に発生するものです。
そのため日本では昔から、このような突然の出費に備えるためのシステムが整えられてきました。
そのひとつが「互助会」です。
ここでは互助会のシステムと、互助会で葬儀の費用がまかなえるのか、まかなおうとした場合はどのような葬儀にすればよいのかについて解説していきます。
※互助会は葬儀だけではなく結婚式なども対象となります。ただしここでは、特筆すべき理由がある場合を除き、基本的には「葬儀」のことのみを取り上げます。
互助会のシステムと、その金額
互助会とは、「冠婚葬祭の出費に備えて、毎月一定額を積み立てていく」というシステムのことをいいます。また、互助会で積み立てを行っていると、その互助会が提供する「互助会プラン(名称は各互助会で異なります)」で葬儀を行えます。この互助会プランは、一般のプランよりも安く設定されているため、少ない出費で葬儀を挙げることができます。
互助会は非常に歴史のあるシステムです。日本では昭和23年、戦後3年後の1948年に初めて設立されました。戦後すぐの物がない時期に、それでも子どもの結婚を寿ぎたい、家族の死を見送りたいという気持ちのもとで相互扶助の精神に基づき生まれたシステムであり、昭和40年代には全国に広まりました。令和の世になっても互助会のニーズはあり続け、現在も日本全国で互助会が運営されています。
さてこの互助会ですが、これは「貯金」とは異なるため、基本的には上限額が設定されています。
互助会の上限額・満額は個々の互助会によって多少異なりますが、おおむね50万円程度を上限・満額としているところが多いといえます。
葬儀の費用は互助会の金額でまかなえるか?
上でも述べたように、互助会に加入しておくことで、葬儀のための出費に備えることができますし、一般の人よりも安い値段で葬儀を行うことができます。
では、互助会に加入しておけば、それだけで葬儀費用のすべてをまかなうことができるのでしょうか。
残念ながら、基本的にはこれの答えは「まかなえない」となります。
その理由は2つあります。
- 葬儀の費用が50万円以上になることが多い
- 返礼品やお布施、料理にはこの互助会の積み立て金は使えない
それぞれ見ていきましょう。
葬儀の費用が50万円以上になることが多い
「葬儀の平均費用はいくらか」は、データによって異なります。また、新型コロナウイルス(COVID-19)の流行前と流行後ではその平均費用が大きく異なりますし、地域差もあります。
ただ、経済産業省が2016年に出したデータでは「140万円程度」となっています。また、ほかの調査では200万円程度とされていますから、おおむねこのあたりが葬儀の平均費用と見ることができそうです。
互助会は満額まで積み立てたとしても、その満額・上限額は、おおむね50万円程度です。そのため、平均的な葬儀を挙げようとした場合、互助会で満額まで積み立てていたとしても、100万円~150万円程度の金額が不足することになります。
出典:経済産業省:人生の「節目」の費用は一人150万円で、意外と変化なし?;人生の「節目」に関わるサービス業2業種の動き
返礼品やお布施、料理にはこの互助会の積み立て金は使えない
互助会の積み立て金だけでは葬儀費用をすべて払いきることのできないもうひとつの理由として、「返礼品やお布施、料理には互助会の積み立て金は使えない」という点があります。
「返礼品」は香典返しや会葬お礼を指すものであり、お布施は寺院などの宗教施設・宗教者に支払うものです。また、料理は通夜振る舞いや精進落としのときなどの食事を指します。
これらの費用は、「葬儀プラン」とは別会計となります。返礼品は頂いた不祝儀に応じてお渡しするものであり、お布施は喪家が出す金額を決められるものです。また、通夜振る舞いや精進落としは、人数によってその金額が大きく異なるものです。支払い先が異なるケースも多くみられるため、互助会・葬儀会社のプランでは、これらは別会計として計上されます。特にお布施のやり取りは、宗教施設・宗教者と喪家の間でやり取りされるものであり、互助会や葬儀会社は基本的にノータッチです。
返礼品やお布施、食事はこのような性質を持つため、互助会の積み立て金ではまかなえません。たとえば「互助会の積み立て金は満額の50万円に達していて、かつ葬儀のプランは20万円である」という場合であっても、これは同じです。
※お布施には明確な「価格設定」はありませんが、「相場」はあります。
※返礼品は、余れば返品できるケースが多いといえます。
互助会の積み立て金で葬儀費用のすべてをまかなうためにはどうすればいいのか?
「互助会で積み立てた額が満額になっていたとしても、それだけで葬儀費用をまかなうことは難しい」としました。
ただし、例外もあります。そのキーワードとなるのが「家族葬」です。
家族葬とは、一般の弔問客を呼ばず、喪家が声をかけた人だけで行う葬儀をいいます。
新型コロナウイルス(COVID-19)の流行によってこの家族葬が注目を浴び始めましたが、このかたちを選べば、互助会の積み立て金だけで葬儀費用をすべてまかなうことも不可能ではありません。
- 家族のみを呼ぶ小さな葬儀にする
- 食事をしない
の2つの条件を満たせば、新しく負担する金額を0にすることが可能です。
家族のみの小さな葬儀にすれば、返礼品などの費用は不要です。また葬儀の規模自体が小さくなるため、人件費やフロアの使用料も削減できます。
また、感染症対策の観点からも勧められた「会食をしない」という選択肢は、葬儀費用を抑えるための選択肢としても有効です。ちなみに新型コロナウイルス(COVID-19)が落ち着いた後でも、「喪主が高齢であり会食に耐えられないので、お弁当を配るだけにする」としているところもあります。
互助会は、「これに加入しておきさえすれば、冠婚葬祭の心配が一切なくなる」というものではありません。互助会の積み立て金だけで葬儀をまかなうことは難しいからです。
ただ工夫次第では互助会の積み立て金だけで葬儀を完結させることはできます。また互助会に入っておくことで葬儀自体を安く行うことができます。さらに、きちんとお金を積み立てておくことで、亡くなったそのときに支払わなければならない負担額を大きく軽減できます。
さらに互助会に加入しておくことで、「自分や家族にとって理想的な葬儀とは何か」を考えることもできるようになります。このように「理想的な葬儀」を考えることで、無駄なく、そしてその人らしい後悔のない葬儀を行えるようになるでしょう。
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