「土地(不動産)を相続したいけれど、どのような手続きをしたら良いの?」と多くの人が思うでしょう。土地の相続は人生で何度もあるものではないため、そう思うのは当然のことです。初めての人でも分かりやすく、土地の相続に必要な書類と手続きの方法を説明します。
土地の相続とは
ここではまず、土地と相続とはどういったものなのかを説明します。
土地(不動産)とは
土地とは、一定の範囲の地面とその範囲内の空中と地中を含んだもののことを言います。不動産としての土地は、人為的に区分された一定範囲の地面のことを指します。通常、土地という言葉を聞いた時には地面のみを想像しますが、土地を使用する際には当然ながら地面の上の部分である空間や地下空間も利用します。上空や地下の範囲がどこまで土地に含まれるかは、社会通念の範囲内とされています。
相続とは
相続とは死亡した人(被相続人)の財産・権利・義務を相続人が引き継ぐことです。相続人は民法で定められています。「配偶者」、「死亡した人の子供」、「死亡した人の直系尊属」、「死亡した人の兄弟姉妹」が相続人になります。
相続人の順位
相続人には順位があり、配偶者は常に相続人となります。配偶者以外の人は次の順序で配偶者と一緒に相続人となります。
第1順位は死亡した人の子供です。既に子供が死亡している場合は、その子供の直系の卑属である子供や孫が相続人となります。
第2順位は死亡した人の直系尊属(父母や祖父母など)です。第1順位の人がいない場合は、第2順位の人が相続人となります。死亡した被相続人により近い世代である父母の方が優先されます。
第3順位は死亡した人の兄弟姉妹です。第1順位の人、第2順位の人もいない場合は第3順位の人が相続人になります。もし死亡した被相続人の兄弟姉妹、その兄弟姉妹が死亡している場合は、その人の子供が相続人となります。
子供いない夫婦の注意点
子供がいない夫婦で両親が健在、もしくは兄弟姉妹がいる場合に死亡していない夫婦の一方に生活を維持するために全ての財産を相続させたい場合、その旨を記載した遺言書を作成がおすすめです。
土地の相続において必要な3つの手続き
必要な3つの手続きを紹介します。
遺産分割協議書を作成する
死亡した被相続人の所有していた土地の登録名義変更のためには、まずは相続人同士で話し合いを行い、まずは相続する土地を誰の名義にするかを決める必要があります。
話し合いの方法
この話し合いのことを「遺産分割協議」と言います。この遺産分割協議は、必ず相続人全員が同じ場所に集まって行う必要はありません。メールや電話、手紙などで行っても問題ありませんので、相続者が遠方にいる場合はこれらの手段を通じて協議を進めましょう。
遺産分割協議書の作成方法
相続する土地を誰の名義にするかが決まったら、必ず遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書には決まった書き方やフォーマットはありませんが、以下の3点に注意しましょう。
- 「相続人全員で協議した」という文言を書く
- 不動産については「登記事項証明書」を書き写す
- 印鑑証明と実印
相続手続きに必要な書類と費用を準備する
必要書類と費用について説明します。
必要書類
土地を相続するためは以下の書類が必要になります。
- 死亡した人の戸籍謄本(出生から死亡までのすべて)
- 死亡した人の住民票の除票
- 相続人全員の印鑑証明書
- 相続人全員の住民票
- 土地の相続登記の申請書類
- 不動産の固定資産評価証明書
- 不動産の全部事項証明書(法務局)
土地の相続登記の申請書を書く
相続登記申請書とは、法務局に不動産の名義変更を申請するための書類です。法務局にある相続申請書のひな形を参考に作成すると良いでしょう。
相続登記に必要な費用
必要な費用は以下の通りです。
- 戸籍謄本類の発行手数料:3000円程
- 登記事項証明書:不動産1つにつき600円
- 郵便代:場所により異なります
- 法務局に納付する登録免許税:固定資産評価額合計×0.4%
書類を法務局に提出する
相続登記の書類と費用の準備ができたら法務局に書類を提出して、土地の名義を変更します。申請先の法務局は以下の法務局のホームページから探すことができます。
法務局 不動産登記申請手続き
複数人で土地を分割相続する方法
「相続する土地は1つだけど、相続人は複数人いる場合はどうしたら良いの?」と困る方は多いです。相続する1つの土地を分割するには現物分割、代償分割、換価分割、共有分割の4つの方法があります。それらの方法を以下でご紹介します。
現物分割
現物分割とは、共有不動産を分筆して土地を物理的に分割して、相続者がそれぞれの土地を取得する方法です。共有物の分割は通常は共有者間の協議によって決める必要があります。しかし、協議で決まらない場合には、共有分割訴訟という訴訟手続きによって分割を行うことができます。
代償分割
財産が不動産のみしかなく、一人が不動産を相続すると他の相続人は相続する財産がなくなってしまいます。相続者が一人の場合は問題ありませんが、多くの場合は複数の相続者がいます。そのような場合には、不動産を相続しなかった人に対して金銭を支払って清算する方法があります。このような方法を代償分割と言います。
換価分割
不動産の相続が発生した場合でも、その不動産を相続人の誰も相続したくない場合もあります。そのような場合には、土地を売却して現金化してそれらを相続人の間で分割する方法もあります。これを換価分割と言います。
共有分割
共有分割は不動産を物理的に分割せず、不動産全体を相続人がそれぞれの割合で共有する方法です。
土地相続でよくある4つのトラブルと解決方法
ここでは4つのトラブルと解決方法を紹介します。
分割の比率でもめる
土地は均等に分割したら相続人が納得するというわけではありません。1000万円以下の遺産でも問題が発生することが多くあります。対策として、トラブルが予想されそうな場合には早めに専門家に相談して事前にトラブルを予防することが大切です。
相続人が多すぎて相続内容がまとまらない
被相続人の財産の相続権を持つ人を法定相続人と呼びます。法定相続人は基本的に被相続人の配偶者や子供、兄弟姉妹になることが多いです。しかし、被相続人の死亡後に養子や隠し子などが現れることがあります。ドラマのようですが、相続金額が大きいほどそういった人が現れることが多いです。
このような場合の対処方法として、相続人の範囲や遺産分割の法的割合を知っておくことが重要です。法的知識があることで、不当な要求に対応することができます。
寄与分で揉める
例えば、被相続人の長女が被相続人の死亡する前の介護をしていた場合に「私がお父さんの面倒を見てきたのよ!もっと財産を相続する権利が私にはあるはず!」と相続財産の増加を要求する場合があります。この様な場合、寄与分といって相続に特別な考慮がなされます。法定相続分で財産を分割する場合は兄弟姉妹に関係なく子供がもらえる割合は一緒になります。寄与分については民法第904条2項にて記載があります。
第904条の2 共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者
出典:http://www.houko.com/00/01/M31/009.HTM#s5.3.2
自分が寄与分の財産を欲しい場合はしっかりと法律に則って寄与分を主張することが大切です。また、寄与分が認められるのは相続人に限られるため、相続人以外が寄与分を求めてきた場合は、寄与分は認められないことを説明しましょう。
内容の偏った遺言書がある
遺産相続の原則として、被相続人の財産の取扱は本人の自由です。そのため、第三者に財産の全てを渡す旨の記載がある遺言書が出てくる場合もあります。そうなると第三者と、配偶者や子供たちとの間でトラブルになりやすいです。
このような場合の対処方法としては、その遺言書の効力をまずは確認することが大切です。遺言書には書き方、効力、開封時の注意点などの規定があります。そのため、まずはそれらの部分を確認して、正しい知識に基づいて遺言書を確認することが大切です。
土地の相続において注意すること
土地の共有はできるだけ避けましょう。
被相続人が死亡し相続者が決定するまでは、その土地は相続人全員の共有の状態になっています。このような状態を遺産共有と言います。遺産共有の状態のままで放置することも不可能ではありません。しかし、遺産共有のデメリットは大きいです。
例えば、不動産を売却するときにも共有者の同意がなければできません。また、共有者の誰かが亡くなれば再び相続が発生し、その土地に関わる人が増加していきます。そうなるとその土地を活用するための手続きはますます煩雑になってしまいます。
そのような不都合な事態を避けるためにも、土地の相続が発生した場合にはできるだけ速やかに特定の相続人を決定して相続の手続きを行うことが好ましいです。
まとめ
土地の相続に必要な書類は以下の7種類です。
- 死亡した人の戸籍謄本(出生から死亡までのすべて)
- 死亡した人の住民票の除票
- 相続人全員の印鑑証明書
- 相続人全員の住民票
- 土地の相続登記の申請書類
- 不動産の固定資産評価証明書
- 不動産の全部事項証明書(法務局)
これらの書類を完成させた状態で法務局に提出することで、土地の名義変更を行うことができます。また複数人で土地を相続する場合は、分割して相続する方法もあります。土地の相続ではトラブルも多く発生しますので、正しい知識を身に着け、時には専門家の力を借りながら円滑な土地の相続を行いましょう。
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