天台宗は日本に広まる仏教の宗派のひとつです。天台宗には独自の数珠の仕様や持ち方があり、葬儀も他の宗派とは違う流れで進められるということをご存知でしょうか。
宗派ごとのマナーや作法を理解しておかないと、自分が恥をかくだけでなく、故人や遺族、他の参列者などに不快な思いをさせてしまうことにもなりませません。
今回は天台宗の葬儀のマナーや作法について説明していきます。自分が喪主になるときも、参列する側になるときにも必要なことを紹介しているので、参考にしてください。
天台宗とは?
天台宗とは、比叡山延暦寺を総本山とする仏教です。法華経を経典としていて、天台法華宗、法華宗と呼ばれることもあります。
日本においては、西暦806年(延暦25年)に最澄(後の伝教法師)を宗祖として開かれました。もともとは中国(当時の隋)の僧侶智顗(ちぎ)を開祖、天台山を本山として広まった宗派であり、遣唐使として唐に渡った最澄が天台山で修行し、その教えを日本に持ち帰って開宗したといわれています。
法然(浄土宗の開祖)、親鸞(浄土真宗の開祖)、栄西(臨済宗の開祖)、道元(曹洞宗の開祖)、日蓮(日蓮宗の開祖)など、他の宗派の開祖も比叡山で学んでいたことから、比叡山は「日本仏教の母山」と呼ばれることもあるそうです。
天台宗の葬儀のお経
天台宗の葬儀では、顕教法要・例示作法・密教法要を大切に考えていて、葬儀では法華経・阿弥陀経・光明真言が唱えられます。
顕教法要では法華経を唱えることで煩悩を少なくして日々の行いを懺悔し、例示作法では阿弥陀経を唱えて極楽浄土を祈願、密教法要では光明真言により故人の供養と極楽浄土を祈念します。
天台宗葬儀の式次第
天台宗の葬儀は阿弥陀経を主体として、人は全て仏になることができるという教えのもとに行われます。そのため、故人が仏の弟子になるための儀式と浄土へ向かうための儀式である式次第をもとに葬儀が進める必要があるのです。
以下で式次第を紹介していきましょう。
剃度式
故人の身なりを整え、浄土へ向かうための準備をする儀式です。故人を水とお香で清めて髪を剃り、出家した証とします。ただし、現在では実際に剃髪することはなく、煩悩をなくす儀式として形式的にカミソリを頭に当てるだけになっているところが多いです。
誦経式
阿弥陀経を唱えて、お経の功徳によって故人が悟りに至ることを願う儀式です。
引導式
光明真言を唱えて(光明供)個人に中心に仏の教えを与え、仏の国に行くように教え諭します。
行列式
故人が西方にあるとされる極楽浄土に進んでいくための儀式を行います。
三昧式
法華経を唱えて故人の心が安定した境地に入れるようにするために行う儀式です。
天台宗のお金のマナー
葬儀には、お布施や香典など「お金」まつわるマナーがあります。知らずにマナー違反をしてしまうと、渡した相手を不快にさせてしまい、思わぬトラブルにつながることもあるので注意しましょう。
以下でお布施や香典のマナーについて説明していきます。
お布施
葬儀などの法事や法要で僧侶に渡す謝礼のことをお布施といいます。お布施には、戒名料が含まれることもあるので、前もって確認することをおすすめします。
天台宗のお布施の書き方や包み方、相場は以下の通りです。
書き方
何も書かなくてもマナー違反にはならないという意見もありますが、下記のように記載した方が親切でしょう。
【表】
表面は普通の黒墨で「御布施」もしくは「お布施」と記載し、下部に「○○家」もしくはフルネームを記載します。交通費の場合は「御車両」と記載し、宴席代などのお膳料をお渡しするときは「御膳料」と記載しましょう。
【裏】
右側もしくは中心に金額、左側に住所・電話番号・氏名を書くと親切です。金額を書くときには、金額の上に「金」と書き、金額を旧字体の漢数字で記載しましょう。(例:10万円の場合…金壱拾萬圓)
包み方
一般的には奉書紙で包むのが丁寧とされていますが、用意できない場合は市販の白い封筒でかまいません。ただし、郵便番号欄などがない無地のものを選ぶようにしましょう。
一般的には水引は不要とされています。必要な場合、関東では白黒や双銀、関西では白黄を使うことが多いといわれています。
ただし、水引を掛けない方が丁寧とする場合もあるため、風習がないのであれば、掛けない方が無難でしょう。
御布施のお金は「あらかじめ用意しておくもの」になるので、古いお札ではなく新札(俗にいうピン札)を用意しましょう。
そして「肖像画が表面側(御布施と書いた側)」を向くように入れるようにしてください。
費用の相場
お布施の金額には、とくに定められた決まりがありません。そのため、お布施の相場は地域やお寺との関係などによって大きな差がありますが、一般的には15万円から50万円くらいが多いといわれています。
ただし、本来お布施の金額は無理のない範囲で構わないといわれています。僧侶に直接聞いても失礼にはあたらないとされているので、経済的な事情がある場合は直接相談してもいいでしょう。
香典の注意点
葬儀の場合は、香典袋(不祝儀袋)の表書きは、薄墨で御霊前・御香典・御香料と記載しましょう。御仏前は四十九日法要を過ぎてから記載するものなので、使わないように注意してください。
香典袋は黒白もしくは双銀の水引で結び切のものを選び、新札(ピン札)を使わないように注意しましょう。新札を使うと「あらかじめ準備していた」ことになり失礼にあたります。新札は折り目をつけてから入れるようにしてください。
そして、肖像画が香典袋の表側にならないように(お金を出したときに人物が見えないように)入れる方がいいでしょう。
天台宗のお参りのマナー・作法
ここでは、天台宗の葬儀の際のお参りのマナーや作法について説明しています。いざというときに慌てないように、きちんと目を通しておきましょう。
数珠の持ち方
市販されている数珠の多くは、直系10㎝の珠を使った略式数珠です。略式数珠は、宗派に関わらず幅広く使えるということで一般化していますが、本来は各宗派にあわせた本蓮数珠(本式数珠)を持つ方が良いとされています。
天台宗では、主玉(平玉)を人間の煩悩の数である108個、天玉(丸玉)を4個、親玉(丸玉)1個、弟子玉30個(平玉20個と丸玉10個)からなる二重のものを本蓮数珠としていて、信者の男性は9寸サイズ、女性は8寸サイズを持つことが多いようです。
なぜ扁平な平玉を使うかというと、数珠を擦り合わせたときの音が丸玉よりも大きく、そのときの音を大切に考えているからといわれています。
数珠は、両手の人差し指と中指の間にかけてから、そのまま手を合わせて持ちます。片手で持つときは二重にし、親玉を上にして握るように持ちましょう。
散華
天台宗の葬儀では、故人を供養するために散華が行われます。散華とは、僧侶が棺に蓮の花びらの形の色紙を撒く儀式のことです。
説法で来迎した仏をたたえるために人々が花を撒いたことや、仏が来迎したときに花が降ってきたことが由来になっているといわれています。
焼香の作法
仏教の葬儀では、焼香が必要になることが大半です。焼香には、線香を使う場合と抹香(粉状のお香)を使う場合があるので、どちらの作法も理解しておく必要があります。
線香の場合
線香の本数に明確な決まりはありませんが、1本もしくは3本持つのが一般的です。数珠は左手、線香を右手に持ち、線香をろうそくに近づけ火をつけます。
線香についた火は、左手で仰いで消すか線香をかるく振って消しましょう。息を吹きかけるのは無礼にあたるので、しないようにしましょう。
線香が3本の場合は手前に1本、奥に2本を立てた状態で香炉にさします。線香をさすときは、他の人が立てた線香にぶつからないように注意しましょう。
抹香(粉状のお香)の場合
日常のお参りでは線香を使うのが一般的ですが、通夜や葬儀、法要では抹香を使った焼香が多いようです。
右手の親指と人差し指、中指の3本で抹香をつまみ、少し頭をたれるようにして目を閉じ、焼香をつまんだ指を額までささげあげ(押しいただき)ます。その後つまんだ焼香を香炉へ落として、1回から3回繰り返します。(回数については特に決まっていません)
天台宗の葬儀まとめ
いかがでしたか。天台宗の葬儀のことが理解できたでしょうか。
天台宗の葬儀は、剃度式・誦経式・引導式・行列式・三昧式の式次第をもとに進められます。他の宗派の葬儀と少し違う流れになることを理解しておくことが重要です。
そしてお参りのときは、焼香や数珠の持ち方などの作法にも注意しましょう。
また、お布施を渡すときは新札を用意し黒墨で書き、香典は新札は使わず薄墨で書くなど、お金に関するマナーにも注意する必要があります。
葬儀には故人を見送るために多くの人が集まってきます。それぞれが気持ちよく見送ってあげられるように、マナーにあわせた立ち居振る舞いを努めましょう。
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