【相続放棄】流れ・手続き・費用・期限などを解説!

相続放棄

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相続財産は決して自身の財産のプラスになるものばかりではありません。財産の中に負債がある場合など、事情によっては相続する権利を放棄したいと考えている方もいるでしょう。そのためには正しい知識武装が必要です。この記事では相続放棄の流れや手続きの方法、費用や期限など、相続放棄に関する基礎知識を詳しく解説していきます。

相続放棄とは

相続人には被相続人の財産を相続する権利があり、その権利を放棄することを相続放棄といいます。
相続放棄をすると多額の借金などのマイナスの財産はもちろん、預貯金や不動産などといったプラスとなる財産も一切受け取ることはできません。

相続放棄①

この相続放棄を合わせて相続方法には3つの方法が存在します。他の2つは以下の通りです。

  • プラスもマイナスも含めてすべての財産を相続する単純承認
  • 相続財産の中から負債を返済していく限定承認
相続財産の中にどのようなものが含まれているかは様々です。一般的なイメージは現金や不動産などのプラスの財産ですが、場合によってはマイナスの財産が含まれていることもあります。当然こういったケースでは相続人が不利益を被ることもあるので、相続人は単純承認や限定承認、あるいは相続放棄のいずれかを選択します。

相続方法によって用意するものや手続きなどが異なるので、上記の3つの方法の相続について詳しく知りたい方は以下の記事をご参照ください。

【相続の基礎知識】単純承認となる3つのケースを解説!

【相続の基礎知識】限定承認のケース|メリット・デメリット

相続放棄のメリットとデメリット

相続放棄の概要がわかったところで次に相続放棄のメリットとデメリットを見ていきましょう。

メリット1: 借金のような負債の相続を免れる

サラ金やクレジットカードの借金、銀行からの借入れなど、マイナスとなる財産を相続せずに済みます。

メリット2: 遺産分割協議や手続きに参加する必要がなくなる

相続放棄によって相続人同士のトラブルに巻き込まれることがなくなり、相続に関する様々な手続きにも関わらずに済みます。

デメリット1: 預貯金や不動産などのプラスの財産も受け取ることができない

借金などを負担することは避けられても、それ以外のどんな財産も一切受け取ることができません。プラスの財産が負債を上回る場合には損をしてしまうこともあります。

デメリット2: 資産を保有・管理ができない

価値のある資産や思い出のある資産を受け取ることも当然できません。管理もできないので、資産の行方は他の相続人に任せることになります。

相続放棄の流れと手続き方法

相続人が相続放棄をする際にはどのような手続きを踏むのでしょうか。注意点や必要書類なども含めて、ここでは相続放棄の流れについてご説明していきます。

相続放棄には相続財産の調査が重要

相続放棄をするかどうかを決める前に、相続放棄が適した方法なのかを判断する必要があります。多額の負債がある場合は当然選択肢が狭まる可能性が高いですが、もし資産が債務よりも大きければ相続放棄をする必要はないかもしれません。そのため相続ではどのような相続財産かあるのかを調査することが重要です。

預貯金通帳や金融機関からの通知書などがあれば残高証明書を発行してもらったり、不動産については市町村役場で固定資産課税台帳を見せてもらったりします。プラスの財産を調査し終わったら次は負債を調査します。支払いに関する書類がないか探したり、借用書や契約書などがないかもチェックしたりします。

家庭裁判所に提出する相続放棄申述書を作成する

負債が大きい場合や、何らかの事情が原因で相続放棄を決めたとします。その際には家庭裁判所で手続きを行うことになりますが、手続きには相続放棄申述書が必要になります。

また、相続放棄に関する手続きは3ヶ月以内に行わなければいけません。期限については後述しますが、相続放棄申述書を作成して必要書類や費用とともに家庭裁判所に提出しましょう。申述書の書き方は家庭裁判所に書式があるので見本にすると良いでしょう。提出先は、被相続人が最後に住んでいた住所地を管轄する家庭裁判所となります。

相続放棄の必要書類

  • 相続放棄申述書
  • 被相続人の戸籍の附票。または住民票の除票
  • 申述人の戸籍謄本
  • 被相続人の死亡がわかる戸籍謄本
上記が相続放棄に必要となる書類です。申述人が代襲相続人であるなど、被相続人と申述人がどのような関係にあるかによって必要となる書類が異なるので、役所に事前に確認するなどして用意してください。ケースによって、出生から死亡するまでのすべての戸籍謄本が必要になったり、被相続人と血族関係のある人物の情報が載っている戸籍謄本まで集めたりしなければいけないこともあります。

次にご説明する相続人の確定もそうですが、戸籍謄本を個人で集めるのが難しいという場合には専門家に相談する必要があるかもしれません。

相続人の確定方法

そもそも相続人を確定するにはどのような手続きを踏むのでしょうか。相続が発生すると、遺された財産をどのように扱うかを決めるために遺産分割協議が行われます。遺産分割協議を行うためには相続人を明らかにする必要があるため、相続人の調査が行われます。それを確定するために戸籍調査が行われるのです。本籍地にある戸籍謄本を請求して、結婚や移籍などがあればさらに以前の戸籍謄本を請求し、徐々に戸籍を辿っていきます。

このように出生時の戸籍謄本まで遡るのです。

相続放棄は他の相続人と相談する必要がない

相続放棄の決定や手続きに関しては、相続放棄を希望する相続人一人で行うことができます。他の相続人とわざわざ相談する必要はなく、相続放棄に関して反対する相続人がいたとしても自分一人で判断し、行動することができます。限定承認ではこのようなことができないので、一人で行動できるという点も相続放棄のメリットといえるでしょう。他の相続人に合わせてゆっくり行動していては手続きの期限を過ぎてしまうこともあるので注意が必要です。

疑問がある場合は専門家に相談する

一人で判断・行動できるのが相続放棄のメリットではありますが、それでも相続放棄についてどうするべきか悩んだり、手続きをする過程で思わぬミスをしてしまったりすることがあるかもしれません。一人でもできる制度だからといって単純なわけではないのです。自分一人ですべてを対処しようとせずに、わからないことがあれば弁護士などの専門家に相談するのが良いでしょう。

相続放棄の期限

相続人が相続放棄をする際に注意しなければいけないのはその期限です。メリットやデメリットを考慮した上で相続放棄をするかどうか迷ってしまうケースもあるかもしれませんが、相続放棄の手続きは3ヶ月以内に行わなければいけません。この期間を熟慮期間といいます。民法第915条では以下のように定められています。

相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない

引用元 :e-Gov民法915条

このように相続方法を単純承認、限定承認、あるいは相続放棄にするかは3ヶ月以内に決めなければいけません。

相続放棄②

相続放棄は3ヶ月の熟慮期間内に手続きをしなければいけない

相続放棄をするかどうかがなかなか決まらない場合には熟慮期間を延長してもらえる可能性についても考えてみましょう。熟慮期間の延長は家庭裁判所に申し立てを行います。しかし延長が認められるにはそれ相応の事情がなくてはいけません。相続人が海外にいたり、相続財産が複雑だったりするケースなど、延長が認められるケースは限られているので注意が必要です。

熟慮期間は被相続人が亡くなったことを知った時点から開始されます。被相続人と生前にほとんど関わりがなく、死亡したことすら知らないというケースも珍しくありません。死亡を知らなければ熟慮期間は経過しませんが、死亡を確認したらできるだけ早く手続きに移りましょう。

熟慮期間の延長は家庭裁判所に申し立てる

熟慮期間の延長申し立ては家庭裁判所で行います。申し立てに必要な費用として、収入印紙800円分と連絡用の郵便切手が必要です。必要書類は以下の通りです。

  • 申立書
  • 被相続人の住民票除票。または戸籍の附票
  • 被相続人の戸籍謄本
これらの書類を提出して、審査の結果を待ちます。延長申し立ても熟慮期間に手続きを行うようにしてください。審査が通れば延長する期間が伝えられます。延長期間中に相続放棄を決められない場合は、再度延長の申し立てをすることも可能です。

詳しい期限や手続き方法に関しては以下の記事をご参照ください。

【相続を始める前に!】様々な相続財産の調査方法を解説

【相続の基礎知識】4つの重要手続きの期限・延長について

相続放棄の費用

相続放棄は相続人が個人で行うことができますし、手続きにかかる費用も高額ではありません。相続放棄申述書を提出する際には、収入印紙を800円分購入します。収入印紙を申述書に貼り付けて提出することになりますが、こちらの連絡用に郵便切手がかかります。郵便切手については提出先や郵便局などに事前に確認すると良いでしょう。

他に必要な費用として、戸籍謄本にかかるものがあります。戸籍謄本は1通450円がかかります。また除籍謄本には750円の費用がかかります。生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本を郵送で取り寄せる場合には、合計して5000円以上の費用がかかってしまうこともありますし、戸籍謄本などの書類は自身で集めることが大変なので、専門家に依頼するという方法もあります。

相続放棄と代襲相続の関係性

次に相続放棄と代襲相続の関係性についてご説明します。代襲相続とは、相続人が被相続人よりも早くに亡くなっていた場合、相続人の子供や孫などが相続人に代わって相続することです。ここで重要なのは、相続放棄による代襲相続は発生しないという点です。つまり相続人が相続放棄をしたからといって、それが原因で自動的に代襲相続が発生することはありません。

さらにもう一点注意したいのが、代襲相続をする際にも相続放棄が必要なケースがある、ということです。代襲相続の対象となる相続人は、自身が代襲相続をする場合に相続財産に負債がないか確認しなければいけません。万が一多くの負債が残されている場合には相続放棄を検討する必要があります。

兄弟の代襲相続とは

代襲相続の対象になるのは被相続人の子供や兄弟です。被相続人よりも先にその子供や兄弟が亡くなっていた、あるいは何らかの理由で相続権を失っていた場合に代襲相続は発生します。ただし先述したように相続放棄による代襲相続は発生しません。また、直系尊属や配偶者は代襲相続の対象とはならないので注意が必要です。

兄弟の代襲相続では異母・異父兄弟の場合だと相続分が少なくなることもあります。相続分を知るためには、被代襲者と被相続人の関係性をきちんと把握することが重要です。また、甥や姪が養子だった場合には代襲相続ができない可能性もあります。自分たちで判断することが難しいケースでは専門家に相談するのがおすすめです。

代襲相続については以下の記事をご参照ください。

【代襲相続】割合・開始要因・相続放棄・養子のケース

代襲相続人の注意点

相続が開始されると相続人が遺産分割について協議したり、相続人自身が相続方法について考えたりします。相続人は、単純承認・限定承認・相続放棄のいずれかを選択しなければいけません。各手続きには期限があるので、相続財産の把握や相続方法についてある程度調べておく必要があります。

遺産分割協議には誰が参加するのかをしっかりと把握することも重要です。家庭によって遺産分割協議をどのように進めていくかというのは異なるので、代襲相続人も含め、事前に相続人同士で話し合わなければいけません。代襲相続人は相続分が少ないことが多く、相続税の申告をしなくても済むケースがあります。自身の相続税はどうなるのかをきちんと把握しておきましょう。

専門家に頼ることも視野に入れる

一口で代襲相続といっても、対象者が誰になるかによって考え方が少し異なる部分も出てきます。片親が違ったり、養子だったりする場合には代襲相続が難しくなることもありますし、兄弟の代襲相続は相続税の計算方法についても注意しなければいけません。相続人が新たに増えることで通常よりも手間がかかったり、トラブルが起きてしまったりすることもあります。そこで相続人全員の負担が増えてしまうようであれば、専門家を仲介に入れることも視野に入れましょう。

まとめ

被相続人が残した大きな借金など、マイナスの財産を相続しないために相続放棄をするという選択肢があります。しかし場合によっては限定承認をする方が良いということもあるでしょう。正しい知識がなければ手続きなどでつまずいてしまう危険性もありますし、相続放棄をしたにも関わらず財産を受け取ってしまった場合には犯罪行為になってしまうこともあります。自身で正しい知識を身に付けようとする姿勢は大事ですが、単純に負債をなくすために相続放棄をするのではなく、少しでもわからないことがあれば相続放棄の問題に詳しい弁護士などのアドバイスを受けると良いでしょう。

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