仏壇が家にある人は、一度はその仏壇にお菓子をお供えしたことがあるのではないでしょうか。今回はこの「仏壇にお菓子をお供えする行為」について取り上げて、
- そもそも仏壇にお菓子をお供えするのは何のため?
- 仏壇にお供えするお菓子はどんなものがいいの?
- 仏壇にお供えした後のお菓子はどうすればいいの?
の疑問に答えていきます。
仏壇にお菓子をお供えするのは「ありがとう」の気持ちを伝えるため
「亡くなった人もお腹がすくだろうから」という考えで、仏壇にお菓子をお供えする人はそう少なくはないと思われます。ただ、実は仏教では「亡くなった人はお腹がすくことはない」と考えています。人は亡くなり、極楽浄土に行った人は飢えることのない生活をするからです。亡くなったときに行く裁判の場所では、たくさんの食事が用意されています。しかしそこにある箸は非常に大きく、その箸を使って自分で自分の口に運ぶことはできません。地獄では人々は自分のことだけを考えて箸と料理に手を伸ばします。しかしすでに述べたように箸は非常に大きく、自分の口に料理を運ぶことはできません。それに対して極楽では、その箸で料理を挟んで、互いに差し向かいの人の口に食事を運びます。そのため、全員の空腹が満たされて、飢えとは無縁の生活ができるのです。
このようなことから、仏教では「仏壇にお菓子をおいても、『故人の食事』という意味は持たない」としています。もっとも、「このお菓子は、亡くなったおじいちゃんが好きだったからお供えしてあげよう」「とてもおいしいお菓子だったから、亡くなったお母さんにも食べてほしい」と考えて仏壇にお菓子をお供えする気持ちまでは否定されるものではありません。家族でお菓子を分け合うように仏壇にお菓子を置くのであれば、それはそれで、供養のかたちのうちのひとつだといえるでしょう。
お供えをするものに、制限はありません
ここからは、「仏壇にお菓子を供える場合は、どんなものを選べばいいのか」について解説していきます。
通夜や葬儀のときに祭壇・故人に捧げられるお菓子は、個別包装で、かつ日持ちのするお菓子とされています。後でばらして参列者に持ち帰ってもらったり、火葬場での軽食として利用されたり、後日に弔問に来てくれた人に出したりするために、このようなものが選ばれています。しかし、自宅で仏壇に供えるお菓子に関しては制限はありません。おまんじゅうなどが比較的よく選ばれていますが、洋菓子でもまったく問題はありませんし、故人が好んでいたお菓子をお供えしても構いません。上でも述べたように、人から頂いた美味しいお菓子をお供えするのもよいでしょう。ただ、仏壇に置かれているお供え用の器はそれほど大きくはありませんし、個別包装されていないものはほこりが溜まりやすいので、この点には注意しなければなりません。なお、法事のときなどに、「こちらはお供え物です」として、掛け紙をかけた菓子折りを頂くことがあるかと思われます。この場合は、掛け紙を外してばらして仏壇にお供えしても構いませんし、菓子折りのまま(掛け紙がかかった状態のまま)お供えをしても失礼にはあたりません。
「仏壇に供えるお菓子」に限った話ではありませんが、故人に真摯に誠実に向き合おうとする場合、そこに厳密な「守らなければならないルール」はほとんど存在しません。故人を思い、真心を込めてお供えするのであれば、どのようなお菓子・どのような形態でも問題はないといえます。
お供えした後のお菓子、どうすればいい?
仏壇にお菓子をお供えした場合、最後に残る疑問は、「仏壇にお供えしたお菓子は、その後どうしたらいいの?」というものです。
日常的にお供えしているお菓子の場合は、ある程度の期間お供えした後そのまま下げて食べてもまったく問題はありません。ただし仏壇を置いてある部屋の風通しがあまりよくなかったり、気温が高い時期だったり、長い時間にわたってお供えし続けたものだったりする場合、お菓子自体が傷んでしまっている可能性もゼロではありません。そのため、家族で食べる前に、まずはお菓子自体の品質に問題がないかをよく確認してください。特におまんじゅうなどは、「表面に変化はないけれど、裏返してみたらカビが生えていた」ということもあります。
法事のときに、参列者から頂いた菓子折りのお供え物についても考えていきましょう。この場合は仏壇に一旦お供えするようにします。法事のときには喪家側があらかじめ用意しておいたお菓子でおもてなしするのが一般的ですが、参列者が持ってきたお菓子をばらしてお茶請けにしても問題はありません。また、一部の地域やご家庭の場合は、「故人と血が近かった参列者は、お供え物を多めに持ってきて、喪家はもちろんほかの参列者にもお渡しする」というやり方をとっているところもあります。このあたりは地域・ご家庭によって考え方が変わるものですから、「そのご家庭・ご親族間のいつものやり方」を踏襲するとよいでしょう。
お供えした後のお菓子には、仏様の力が宿るといわれています。また、仏様と同じものを食べることそれ自体が、供養になるという考え方があります。それに加えて、そもそも「まだ食べられるものを捨てる行為」は決してほめられるものではないという大前提があります。このようなことから、「仏壇に供えたお菓子は、傷んでいるものを除き、みんなで食べるのが原則である」と考えられます。
【補足】お墓や納骨堂に置いたお菓子は持ち帰るのが基本
さて、ここまでは「仏壇に供えるお菓子」について解説してきました。最後に、ここからは「お墓や納骨堂に置いたお菓子はどうするか」について補足的に説明をしていきます。
かつてはお墓にお供えされたお菓子は、寺院の人が下げて食べるのが一般的でした。しかし現在はこのようなスタイルはほぼとられなくなっています。現在の墓地では、(寺院運営かどうかに関わらず)「お花以外のお供え物、特にお菓子や果物などの食べ物は持ち帰ってください」というスタイルを取っています。なぜならこれをそのままお供えしておくと、鳥害や虫害などによってお墓が荒れてしまうからです。また屋内型の納骨堂の場合も、「お供えしたお菓子や果物は、そのままにしておくと腐ってしまうのでお持ち帰りください」というスタンスを取っているところが圧倒的に多いといえます。詳しくは個々の納骨堂の利用規約を確認しなければなりませんが、基本的にはお供えしたものは持ち帰るつもりでいた方がよいでしょう。お墓にお供えしたお菓子も、納骨堂にお供えしたお菓子も、「手を合わせる前に花などと一緒にお供えをして、手を合わせた後に持ち帰る」というやり方をとるのが無難です。なおこのときに、お墓や納骨堂から下げたお菓子も、仏壇にお供えしたお菓子同様、ご家族で食べるとよいでしょう。
仏教の死生観においては、「亡くなり、極楽浄土に行った人は飢えることはない」と考えます。しかし「ありがとう」「どうか安らかに」「一緒においしいものを食べてほしい」と願って仏壇にお供えするお菓子そのものは、決して否定していません。故人のことを思い、故人のことを考え、故人のことを偲びお供えするという行為や、お供えした後のお菓子を下げて食べるという行為は、それ自体が供養のしるしとなるからです。
また、本サイト内にてお菓子以外の仏壇にお供えするものについてもご紹介させていただいておりますのでぜひご参考になさってください。
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