仏教を信じているひとの場合、仏壇にご飯をお供えすることはごく当たり前の行動だと捉えているのではないでしょうか。しかしその意味や成り立ち、宗派による違いなどを、正確に説明することはなかなか難しいといえます。ここでは「仏壇にご飯をお供えする」をテーマに、
- そもそも仏壇にご飯をお供えする意味とは
- 仏壇にご飯をお供えする際の、宗派別の違い
- ご飯と一緒にお供えするものと、そのタイミング
- 仏壇にご飯をお供えする行為に対する、よくある質問
に答えていきましょう。
そもそも仏壇にご飯をお供えする意味とは
まずは、「なぜそもそも仏壇にご飯をお供えするのか」について考えていきましょう。私たち生きている人間は、この「仏壇にご飯をお供えするという行為」について、「仏様に食事を召し上がってもらうため」と考えているかと想われます。しかし実は仏様は、生きているときとは異なり、一般的な食事は召し上がりません。解釈によって違いはありますが、「ご飯から出る湯気だけを食べているのだ」とする説を取る人もいます。ただもっともよくなされる解釈としては、「仏壇にご飯をお供えすることで、『貴方の子々孫々が、飢えることなく今日を過ごしています』とご先祖様に伝えられる。また、今日も飢えることなく一日を始められそうなことをご先祖様に報告するために仏壇にご飯をお供えするのだ」とする説が一般的です。
つまり、「仏壇にご飯をお供えする」という行為は、「自分たちの感謝を伝えるための行動である」といえるのです。もっとも、「仏様の食事」と考えて仏壇にご飯をお供えすることも、決して悪いことではありません。これはご先祖さまのことを考えて心配して行う行為ですし、衷心から出たこの行為は、非常に尊いものだからです。なお、この仏壇にご飯をお供えするときは、「仏飯器(ぶっぱんき)」を使います。実はこの「仏壇にご飯をお供えする方法」は宗派別に異なるため、それについて見ていきましょう。
仏具についてより詳しく知りたい方は、下記の記事を参考にしてください。
宗派別、ご飯のお供えの方法
ご飯の盛り方は、基本的には普段の私たちと同じように、中央を高く盛り、なだらかな山のような曲線を描くようにして盛り付けます。ただし、浄土真宗の場合は異なります。
浄土真宗では「本願寺派(西)」と「大谷派(東)」に大別されますが、本願寺派(西)の場合は、ハスのツボミをイメージさせた盛り付け方をします。仏飯器に高くご飯を盛り、そのうえで、シャモジの背中でハスの華のかたちを作っていくのです。対して大谷派(東)の場合は、同じ「ハス」であっても、「ハスの花」ではなく「ハスの実」をイメージした盛り付け方をします。長い縦長の筒のようにご飯を盛り付けるからです。なおこの盛り付けはなかなか大変であるため、「盛糟(もっそう)」と呼ばれる道具を使っても構いません。これはステンレスなどで出来た丸い筒であり、ここにご飯をつめて。下から専用の道具で押し出すことできれいな円筒形のご飯が盛り付けられる、というものです。ただ、本願寺派(西)にせよ、大谷派(東)派にせよ、「毎日このようなことをするのは大変だ」と考える人もいるでしょう。その場合は、毎日のお供えは他の宗派のようなかたちに合わせて行い、法事などの特別なときにだけ形にこだわるやり方をとってもよいでしょう。
ご飯と一緒にお供えするものと、お供えするタイミングについて
仏壇にご飯をお供えする場合、これを単品でお供えするのではなく、ほかのものもお供えします。その「ほかのもの」は決まっていて、「水・線香・花・ろうそく」です。これにご飯を合わせたものを特に「ご供(ごくう)」と呼んでいて、仏様にお供えするものの基本的なセットだと考えられています。また、人によっては、「家族と同じもの」ということで、その日に作ったおかずなどをお供えすることもあります。
仏壇にご飯をお供えするタイミングは、基本的には朝いちばんが良いとされています。「炊き立ての湯気の香り」を召し上がっていただくことができるからです。
ただこれには諸説あり、「パンでもよい」「炊き立てのご飯でもなくても構わない」などのように、「湯気の立っているご飯」以外の選択肢を容認するご家庭もあります。このあたりは明確に「○○が正解、××が不正解」といえるものではありませんから、ご家庭ごとに話し合って決めていくとよいでしょう。
仏壇にお供えするご飯、よくあるQ&A
ここからは、「仏壇にお供えするご飯」についてよくある質問に答えていきましょう。
お供えした後のご飯はどうする?
お供えしたご飯は、湯気が出なくなったら下げます。これは特に、「(仏壇の)おさがり」といいます。おさがりは、原則として家族全員で頂きます。朝食の席のご飯に混ぜてしまうとよいでしょう。
ただし、夏場などで、「朝にご飯をお供えするが、全員仕事や学校があるので、帰ってくるのは夜」という場合は、ご飯の状況を確認するようにしてください。傷んでいるようならば無理に食べる必要はありません。
ご飯以外のものをお供えするのはいいの?
上でも少し触れましたが、「ご飯以外のものを襲えしたり、仏壇にご飯をお供えする際に昼や夕方のものを出したりしてもいいか」について考えていきます。これは専門家の間でも見解が分かれるところです。ただ、「生前に故人が好きだった」「自分たちもパン食である」という場合は、パンをお供えしても許容されると考える向きがあります。
また、「ライフスタイルの都合で、朝食のときにはご飯は炊かない。ご飯を炊くのは、昼か夜になる」という場合もあるでしょう。この場合は、「湯気が立っている、炊き立てのご飯」をお供えすることを優先とするとよいとされています。つまり、炊いてから何時間も経っているご飯を「朝食時だから」とお供えにするのではなく、昼くらいに「ご飯が炊けたから、今日のお供えは今から」としても構いません。いずれの場合にせよ、もっとも大切なのは「心」です。選ぶものがご飯であってもパンであっても、お供えするタイミングが朝であっても昼であっても夜であっても、そのお詣りが故人を思ってなされるものであれば、一般的なやり方と少しはずれていても問題はないでしょう。
キリスト教や神道ではお供についてどう考えられている?
最後に、「キリスト教や神道では、これをどう考えているか」について解説していきます。神道でも、神棚にご飯をお供えするという考え方はあります。特徴的なのは、神道でお供えする米は、「炊き立ての米でも良いが、生米でも良い」とされている点です。なお炊いたご飯をお供えするときは、仏教同様、炊き立てのご飯が良いとされています。意外なことに、赤飯なども許されます。ただし肉の入った混ぜ込みご飯などは避けましょう。キリスト教の場合は、そもそも異国から伝わってきた文化ですから、「米を供える」という考え方はありません。家庭にお祀りしている家庭用の祭壇にお供えするものは、花やろうそくなどが中心です。ただ、「故人が好きだった食べ物」をお供えとして置くことはあります。
宗教への帰属意識が変わっていくのと同時に、「仏壇にご飯をお供えするときの考え方」も少しずつ変わっていっています。しかし一番大切なことは、「ご先祖様を思い、ご先祖様のためにお供えをする」という思いなのです。
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