人が亡くなったとき、その死を悼み、喪に服そうとする考え方があります。そしてその期間を、「喪中・忌中」といいます。ここではこの「喪中・忌中」を取り上げて、その意味を解説しつつ、喪中・忌中の期間に七五三の予定がかぶっても問題がないのか、問題があるとすればどのようにすればいいのかについて解説していきます。
まずは知っておきたい、喪中と忌中の違い
「喪中・忌中に七五三をしてもいいかどうか」を知るためには、まずは「そもそも喪中・忌中とは何か」について知らなければなりません。喪中・忌中も、両方とも「人が亡くなった場合に、その死を悼み、喪に服す期間」であることには変わりありません。しかし喪中・忌中では、「期間」に違いがあります。
「忌中」とは、「故人が死後の旅を終わらせるまでの期間」を指します。仏教においては四十九日法要が終わるまでである、としています。対して「喪中」とは、「故人が旅立ってからおおよそ1年ほどの期間」を指す言葉です。喪中の場合もお祝い事などは避けるべきであるとされていますが、すでに故人が冥途への旅を追えた後の期間ですから、その制限は忌中に比べてゆるくなります。
ちなみにここでは主に仏教の考え方を元に解説していきますが、神道やキリスト教では忌中はそれぞれ50日と30日をひとつの目安としています。また、仏教においても、「冥途の旅」という考えを取らない宗派もあります。なお、かつては喪に服する期間が法律によって定められていました。「服忌令」と呼ばれるものであり、「両親が亡くなった場合は13か月、夫が亡くなった場合は13か月、妻を亡くした場合は90日」などのように決められていました。男尊女卑の時代の考え方を強く反映したこの法律は、昭和22年に撤廃されましたが、「服喪期間はおおよそ1年程度とする」という考え方は、現在の「喪中は1年間」という考え方に残っています。
喪中と忌中の違いについてはサイト内の記事にて詳しく解説しておりますので参考にしてください。
喪中の七五三は問題なし、忌中の場合は控えるべき
上記を元に、それでは「喪中・忌中に七五三を行うのは問題がないか」について考えていきましょう。結論から言うと、「喪中の場合は七五三を行ってもいいが、忌中の場合は控えるべきである」となります。これには、神道の死生観が関係しています。
喪中でも忌中でも、両方ともお祝い事は原則として控えるべきであるとされています。特に忌中期間は、神社に訪れてはいけないといわれています。神道では、死を「穢れ」と位置づけます。そのため、神域・聖域である神社に、穢れをまとった忌中の人が訪れることはタブーであると考えられているのです。また、神社の鳥居をくぐったり、祈祷を受けたりすることも、宗教観に照らし合わせれば避けるべきでしょう。
ただし、同じように「喪に服する期間」であっても、喪中の場合は忌中ほどにはこのしばりが強くないため、神社を訪れても問題がないといわれています。忌中期間があければ、穢れが神域・聖域に及ぶことはないと考えられているからです。なお神道では、この「死は穢れ」の考え方があるため、人が亡くなったときに行われる葬儀や、忌中明けの神事である五十日祭も神社では行いません。詳しくは下記で触れますが、仏教の場合は「死は穢れである」とはしないため、葬儀や四十九日法要をお寺で行うことができます。これは、神道と仏教の死生観の違いをもっとも分かりやすく表す基準のうちのひとつでもあります。
もっとも、すでに述べたように、現在の「喪中・忌中」は法律で定められたものではなく、あくまで個々人の宗教観や信心によるものです。そのため、「忌中期間ではあるが、七五三をしたい」「亡くなった祖父が、孫娘の七五三を楽しみにしていた」などのようなときは、また話は変わってきます。少なくとも、神社側から「あなたの家では〇月×日にご葬儀があったので、七五三に来てもらうことはできません」などのように通達されることはありません。
忌中に七五三がかぶる場合はどうすればいいの?
上では「そもそも喪中・忌中の考え方は絶対的なものではないため、ご家族が気にしなければ神社に行く方法もある」としましたが、「やはり気になる」という人も多いことでしょう。そのためここでは、「忌中の間は七五三を行ってはいけないということは理解した。それなら、その期間に神社に行くことはしない。ただ、それでも、やはり子どものイベントなのでちゃんとしてあげたい」という場合はどうすればいいかを考えていきましょう。
選択肢としては、下記の3つがあります。
- 翌年(1月以降)にお詣りにいく
- 食事や撮影だけにする
- お寺にお参りする
それぞれ解説していきます。
※下記では、「11月1日に、近しい家族が亡くなった」という状況を想定しています。
1.翌年(1月以降)にお詣りにいく
七五三は、基本的には11月15日に行われます。しかしこれは絶対的なものではありません。七五三のお参りを別の日に行っても、まったく問題はないのです。そのため、11月15日が忌中期間であるのなら、年明けの1月に入ってから七五三のお祝いをするといった方法がとれます。また七五三の数え方は「数え年(生まれた年を1歳と考え、正月が来るたびに1歳年を取るとする考え方)」で求められるのが一般的ですが、現在は満年齢でこれを行う人も増えています。「数え年で3歳(満年齢2歳)のときに行うつもりだった」というケースの場合、思い切って1年後ろ倒しにしても良いでしょう。こうすれば、故人のお見送りもゆっくり行った後に、時間をかけて七五三の準備をすることができます。
2.食事や撮影だけにする
七五三のときには、神社にお参りをして、その前後に食事や撮影をするというやり方を行うケースが多いと思われます。このような計画をしていた場合、神社へのお参りを取りやめにして、食事や撮影だけを行うという方法をとっても構いません。ただし食事に関しては、「食事もまた『お祝い事』を連想させるものだから、原則としては避けるべきである」とする意見もあります。ただこのあたりは、ご家庭ごとのスケジュールや考え方もあるので、ご家族でよく話し合って決めるとよいでしょう。
3.お寺にお参りする
上でも軽く述べましたが、死を穢れとするのは神道の考え方であり、仏教ではこのようには考えません。神道と仏教はかつては混ざり合って存在していましたが、法律によって分離されたこともあり、死生観は大きく違います(もちろん今も共通している部分はあります)。仏教では死を穢れとしないため、忌中であってもお寺にお参りすることにはまったく問題がありません。正月の初詣も、神社の場合は避けるべきだとされていますが、お寺にお参りすることは構わないとされています。このようなことから、「神社ではなく、お寺で七五三を行う」というやり方をとるのもひとつの方法です。実際に、お寺では七五三のご祈願をしているところも多く見られます。
まとめ
「喪中・忌中」の考え方は、絶対的なものではありません。ただ、人の死を悼み、その喪に服すために設けられたものであるため、気にするご家庭も多いことでしょう。この服喪期間に七五三を迎えるお子さんがいるのであればなおさらのことです。しかし、「服喪期間だから、絶対に七五三のお参りをしてはならない」ということはありません。さまざまな方法があるので、そのなかから選びやすいものを選んで対応していくとよいでしょう。
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