終活って?これからの自分と遺していく家族のためにやるべきこと

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「子どもに迷惑をかけたくない」「自分の人生をより良く生きていきたい」ということで、終活を考える人は多くいます。
ここでは、だれもが考えることになる「終活」を取り上げて、その意味や行うメリット、行うべきことについて、網羅的にお話していきます。
※ここでは、特段の事情がある場合を除き、「親が亡くなり、子が見送る場合」を想定しています。また、宗教は仏教と仮定します。

終活の認知度は90パーセント越えだが、やっている人は1割程度

「終活」という言葉は、2009年ごろからマスメディアで取り上げられるようになったものです。
「人生の最後を見据えて行う活動」という意味を持つこの言葉の認知度は非常に高く、その認知度は93パーセントにも達しています。

ただ、「終活という言葉は知っている」「終活が重要なものだとは分かっている」という人は多いものの、実際に終活に取り組んでいる人は少数派です。「今後行いたい」と考えている層は60代では65パーセント以上、50代では80パーセント以上に達しているものの、実践している人の割合は非常に少ないのです。
60代以上でも終活の実践者は15パーセントに達しませんし、働き盛りの50代に至っては6.0パーセントを切っています。

つまり終活は、「多くの人が重要だと分かっているにも関わらず、面倒さなどが先に立ち、取り組む人は少ないものである」といえるでしょう。

出典:住まいとお金の知恵袋「終活の認知は高いが、実際に行っている人は約1割」

終活を行うメリットとは

実践者が少ない「終活」ですが、これを行うことには多くのメリットがあります。
むしろ、終活を行わないことによってさまざまなデメリットが出てくるといえます。
ここでは終活がもたらすメリットについて解説していきます。

状況の整理ができる

終活の過程のなかに、「自分の資産状況を洗い出す」「自分の今後のことを考える」「自分の周囲の人についてまとめる」というものがあります。
この過程を経ることで、自分の状況がきちんと整理できます。

状況をきちんと整理すれば、「困ったときにはだれに頼ればよいか」「すぐに処分しなければならないものは何か」「周りの人に確認しなければならないことは何か」を洗い出すことができます。そしてこの洗い出し作業を行っておけば、自分が大変な状況に置かれたときも、戸惑うことなく冷静に対処できるようになります。

この「状況の整理」は、終活における基本ともなるものです。まずは状況を把握し、整理することで、ほかのさまざまな終活のステップを踏めるようになるわけです。言い方を変えるのであれば、この「状況の整理」だけでもきちんとしておくことで、残された家族の負担が大きく軽減できるということです。

節約ができる

資産状況の書き出しや、サブスクなどの契約の書き出しを行うことで、「漫然と税金を払い続けていたもの」「使っていないにも関わらず、契約しっぱなしになっていたもの」を明らかにすることができます。固定資産税やサブスクの契約は、まとまるとかなり大きな金額になります。そしてそうであるにも関わらず、意識をしていないと、整理や契約解除を忘れてしまうものでもあります。また、紙での請求がないサブスク契約は家族が把握しにくく、「親が旅立った。旅立つ前に貯金に支払い記録があるが、どことどんな契約を結んでいたか分からない……」と混乱するケースも多く見られます。

活用していない資産やサブスクを洗い出し、それの処分・契約解除をすることで、無駄な出費を抑えられるようになります。また事前にこれらを処分・契約解除しておくことで、残されたご家族の手間も大きく軽減することができます(後述します)。

急な生活環境の変化が起きた時も安心

「ピンピンコロリ」は、昔から死に方の理想とされてきました。しかし現在は寿命そのものが伸び、要介護者も増えている状況です。「亡くなる前日まで元気に家族とともに生活していて、介護を受けることも、苦痛を感じることもなく、自宅で亡くなる」という人の割合は、決して多くはありません。自宅での介護が難しくなり、高齢者施設に入る人も出てくるでしょう。

家を引き払って高齢者施設に入る場合は残された家は家族が整理・処分していくことになりますが、その手間と費用は大変なものです。たとえば3DK・3LDKの家を処分する場合、2トントラックが3台分ほど必要になるといわれています。費用も、数十万単位で出ていくことも珍しくありません。さらにそのうえに、「家自体を処分するための手間と費用」もかかります。

しかし終活をしっかり行い、事前に身の回りの品物以外の物を処分しておいた場合、手間も費用も大きく抑えられます。また、「捨ててはいけないものを捨ててしまった」などのようなトラブルが起きることもありません。

また、「自分の面倒が自分で見られなくなったとき」を考えて、終末期医療についてもかいておくと良いでしょう。延命治療を希望するのか、緩和ケアを重視するのかなどをかいておくと、自分の望む「終わりまでの時間」を過ごしやすくなります。

理想とする葬儀や埋葬が実現しやすい

「人が主役になれるときは3回ある。1回目は生まれたとき、2回目は結婚式のとき、そして3回目は葬儀のときだ」という言葉があります。葬儀は、私たちにとって最後の主役の場だといえるでしょう。終活をきちんと行っておけば、この「最後の主役の場」も、自分好みにカスタマイズすることができます。

令和の時代の現在、葬儀のかたちは非常に多様化しています。新型コロナウイルス(COVID-19)の影響もあって現在は「小さな葬儀」が人気を博していますが、その人の生きてきた軌跡を反映するような葬儀もよく執り行われています。たとえば、「故人がひまわりを好んでいたから、ひまわりを祭壇のメインフラワーとして使おう」「故人が浪曲をやっていたから、浪曲の音楽でお見送りしよう」などです。
また埋葬の方法も多様化していて、従来のお墓への埋葬はもちろん、永代供養墓や樹木葬、海洋葬などの自然葬も視野に入れることができます。

終活の過程で、自分の理想とする葬儀を執り行ってくれる葬儀会社を調べてエンディングノートに書いておけば、残されたご家族はまずその葬儀会社に連絡をとってくれるでしょう。また埋葬に関しては、事前に墓地などを購入しておくこともできます(ちなみにこの方法は相続税対策としても有用です)。

終活を行うことで、「自分の最後の舞台」である葬儀を自分好みにプロデュースしたり、終の住処を自分の考えで選んだりすることができるのです。

気持ちや情報をもれなく伝えられる

「親とずっと同居していて、まめに会話もしている」というご家庭の場合は例外として、親が亡くなった場合、多くの人は「だれに連絡すればよいのか分からない」という状況に陥ります。親が亡くなった場合、子どもは親のスマートフォンの連絡先から連絡相手を探そうとしますが、スマートフォンの登録名に関係性(「叔母」「友人」など)が書かれているケースは極めてまれであるため、子どもが親の交友関係を把握しきることは困難です。

しかし終活の一環として、「この人は、こんな関係にある人で、連絡先の電話番号はこれである」とエンディングノートにまとめておけば、このような混乱が起きる可能性は極めて低くなります。
また交友関係をまとめていく過程で、一人ひとりにメッセージを残すこともできます。終活がきっかけとなって、しばらく没交渉になっていた人に連絡を取ろうという気持ち画出てくることもあるかもしれません。

残された家族が格段に楽になる

ここまでいくつか取り上げてきましたが、終活を行うことで残された家族が格段に楽になれるということも覚えておきましょう。

大切な人が亡くなったとき、家族はその悲嘆のなかで、

  1. 故人の残した財産の把握
  2. 故人の心に叶う葬儀と埋葬方法
  3. 故人の連絡先
  4. 故人の残していった荷物の整理

を行わなければなりません。特に2と3は緊急性の高いものであるため、故人の意思を把握できていないと悔いの残るものになりかねません。また、遺産の相続放棄の手続きは3か月以内に行わなければなりませんから、1も迅速に行う必要があります。4はある程度時間をかけても良いものですが、それでも、長く置いておけば固定資産税などがかかります。

実際に親御さんの後始末をしていた人からは、「何一つ整理していかないで亡くなってしまった。後の手続きが大変すぎて、実の親が憎らしくなってしまった」という気持ちを吐露する人もいます。終活は、残していく家族に対する思いやりでもあるのです。

終活の過程で、家族と話す時間も設けられる

終活について、死ぬときのための旅支度という印象を持つ人も多いと思われます。しかし本当は終活とは、「これからの残った時間を、より良く生きるための整理作業」という意味も強く持つものです。

終活を行っていく過程で、ご家族に自分の考えを伝えたり、感謝の気持ちを伝えたりできる機会も増えていきます。よく「あの世に連れて行けるのは思い出だけ」といいますが、ご家族と話し合うことで思い出を共有することもできるでしょう。そしてその「共有された思い出」は、終活を行う人はもちろんのこと、将来的に家族を見送ることになるお子さんにとっても非常に深い意味を持つものとなります。

終活でやるべきこととは?

終活の意味とこれを行うメリットについて紹介してきたところで、最後に「では実際の終活では何を行えばいいのか」について解説していきます。

終活を行ううえで重要になるのが、「エンディングノート」です。エンディングノートとは自分の最後に向けて記すノートであり、資産状況や終末期医療、連絡してほしい相手などを書いておくものです。現在はエンディングノートは非常に多くのところで取り扱われていて、インターネットから無料でダウンロードすることができますし、100円ショップで手に入れることもできます。また終活イベントなどに行くと、無料で貰うこともできます。
下記で紹介する「やるべきこと」は、基本的には「エンディングノートにまとめるべきこと」だと考えてください。

資産・口座状況の確認をする

まず、エンディングノートに資産や口座の情報をまとめておきましょう。不動産があるのならばその不動産の所在地と状況を記します。また、土地の権利書のありかも一緒に書いておく(あるいはエンディングノートと一緒に置いておく)とよいでしょう。

銀行口座もしっかりまとめます。特にネットバンキングのことはしっかり書いておかなければなりません。「通帳もない、明細もない」といったペーパーレスでの運用の場合、残された家族が、「そもそも口座があったことさえも知らなかった」という状況に陥ってしまう可能性が高いからです。

なおエンディングノートは、遺言書とはその性質が異なるものです。エンディングノートに財産の分配などを書いても法的な拘束力はありません。そのため、「財産は甥っ子に譲りたい」などの明確な希望がある場合は、エンディングノートではなく遺言書に記す必要があります。

終末期医療の希望を書く

エンディングノートには、終末期医療についても記載しておきましょう。
延命治療を希望するのかどうか、最後はどのように過ごしたいのかを記します。
また臓器提供や献体の意志があるのであれば、それも記しておきましょう。

この希望は、自分の素直な気持ちを書いてしまって問題ありません。「できる限りの延命治療をしてほしい」などの希望でももちろんかまいません。

葬儀やお墓について書く

葬儀の希望やお墓の希望についても記します。なお、「すでにどこかの葬儀会社の会員になっている」「ここの葬儀会社で葬儀をあげてほしいという明確な希望がある」という場合は、その葬儀会社の名前もきちんと記しておきます。日本では事前にお金を振り込ませる前払い形式をとっている葬儀会社はほとんどありませんが、互助会などに加入しているのであればこれも書いておきましょう。

埋葬場所についても記述が必要です。「今あるお墓に入れてほしい」ということであれば、墓地の名前と連絡先を書いておきましょう。
現在は宗教への帰属意識が薄くなったことから自分の菩提寺がどこかわからないという人も多く見られます。菩提寺についても書くとよいでしょう。

「従来型の墓はあるが、入りたくない」「希望する埋葬方法がある」という場合は、その旨を書き留めておきましょう。

連絡してほしい人をリスト化する

上でも述べたように、同居していない子どもに親の交友関係を把握させようとすることには無理があります。

そのため、終活を行う人自身の手で、連絡してほしい人をリスト化しておきましょう。名前+住所+電話番号、またメッセージもあればそれも記載します。

デジタルサービスとそのパスワードをまとめる

ネットバンキングはもちろん、それ以外のデジタルサービスの契約・使用状況とパスワードもまとめておきましょう。
現在はSNSを駆使する人が多く、「リアルで会ってはいないけれど、SNS上で親しく付き合っている人がいる」というケースもあるでしょう。そのような人に亡くなったことを知らせるために、家族がログインできる状況を作っておくのです。

また、サブスク契約がある場合は、「どことどんな契約をしているか」「パスワードがあればパスワード」「解約時の連絡先」をリスト化しておきます。

【エンディングノート以外】家の片付けを行う

エンディングノートは終活の基本となるものですが、並行して、家の片付けも行っていきましょう。
粗大ごみは市町村の指示に従って出し、それ以外のものは回数を分けて捨てていきます。「絶対に必要なもの」「最後まで手元に残しておきたいもの」以外は処分するという考え方を取ると、部屋がすっきり片付きます。特に死蔵品となっている食器やタオルなどは積極的に処分しましょう。「どうしても捨てがたい」というものに関しては、写真に残して、現物を捨てるようにするとよいでしょう。

注意!遺言書とエンディングノートは違います!

上でも軽く書きましたが、エンディングノートは終活において非常に重要なものではありますが、遺言書とは異なるものです。正しい形式で書かれた遺言書は法的拘束力を持ちますが、エンディングノートには法的拘束力はありません。そのため、「子どもではなく、甥の〇〇に財産を残したい」とエンディングノートに記したとしても、法定相続人である子どもがそれを受け入れなければ、甥には財産が渡らないのです。

対して、遺言書に「甥に財産を相続させる」と書いておいた場合、これは有効となります。子どもは慰留相続分の主張を行うことはできますが、甥にもしっかりと財産を受け継ぐ権利が残されます。
そのため、確実に財産を特定の人に引き継がせたいと思うのであれば、遺言書を作る必要があります。

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