男性のうちの3人に1人が、女性のうちの4人に1人が未婚であるというデータを、総務省が「令和2年国勢調査 人口等基本集計結果」で出しています。実際に、「今現在結婚しておらず、子どももいない」「近しい親戚に、単身者がいる」という人も多いのではないでしょうか。
ここではそんな人のために、「単身者の終活、老い支度」について解説していきます。
※ここでいう「単身者」とは、原則、「結婚をしておらず(もしくは離婚して)、子どももいない」という状況を想定しています。
「遠い親戚はいる」という人のために~残された人が困らない状況を整える
「おひとりさま、単身者」のなかには、3通りがあります。
- 離婚もしくは死別していて、子どもはいるが手を離れている
- 結婚をしておらず(もしくは離別して)子どもはいないが、兄弟姉妹や甥姪がいる
- 完全に単身で生活をしていて、血縁関係のある人がいない、もしくは法定相続人たる人と疎遠である
という状況です。
1の場合は比較的簡単です。一人暮らしをしていて子どもと疎遠になっていても、親が亡くなれば子どもに連絡が行きます。子どもは法定相続人となりますから、子どもがなんらかの手続きを取ってくれるからです。
3は次の項目で取り上げるとして、ここでは2のケースを取り上げます。
この場合は、「残していく人にできるだけ手間をかけないように」「特に付き合いのない親戚が、戸惑わなくて済むように」を念頭に終活を行います。
エンディングノートを作る
エンディングノートは、亡くなった人の希望や状況を把握するためにもっとも有効な手段です。
エンディングノートには、自分の個人情報や利用しているサービスとそのパスワードおよびID、財産状況、連絡先などを記しておきましょう(墓や葬儀などについては後述します)
事前に永代供養墓を契約する、また先祖代々の墓を墓じまいしておく
「遠い親戚が亡くなったけれど、お墓はどうしよう」と迷う人は多くいます。そのため、事前に永代供養墓を契約しておき、「私が亡くなったらここに埋葬してください。永代供養の契約をしてあります」とエンディングノートに書いておきましょう。
また、「自分が祭祀継承者となり、面倒を見てきたお墓がある」という場合は、事前にそのお墓の墓じまいをしておくのも有効です。
葬儀会社の契約をしておく
人が亡くなったときは、非常に短い時間(長くても数時間以内)で葬儀会社を決めなければなりません。残された親族は非常に忙しくなりますし、時間のないなかで決めることになるので希望に合った葬儀会社を探すことも難しくなります。
そのため、事前に葬儀会社と契約をしておくことをおすすめします。事前に契約をしておくと、葬儀費用が安くなることもあります。互助会を利用するのもおすすめの方法です。
また、契約まではいかなくても、「ここに相談に行っている」という葬儀会社の名前を記しておけば、手間を省くことができます。
不要なサービスを解約しておく
エンディングノートをまとめていく過程で、「不要なサービス」「契約したけれど今はもう使っていないサービス」が出てくることもあります。
このようなサービスは、生前に解約しておくとよいでしょう。これらのサービスは、「本人が動けば簡単に解約できるが、残された人が解約しようとすると手間取るもの」「そもそも把握が難しいもの」も多いからです。
財産目録をまとめておく
特に付き合いがなかった人が、財産状況を把握するのはなかなか大変なものです。また財産は、「お金」に直接的に関わってくるため、揉める原因にもなりがちです。
そのため、判断力がしっかりしているときに、財産目録を作っておくことをおすすめします。現在利用している銀行や、所持している不動産をまとめます。また、権利証の場所も記しておきましょう。特にネットバンキング(通帳がない)は、見失いやすいため、しっかりと表記をしておきます。
なお、エンディングノートには法的拘束力はありません。そのため、「遺産をこのようにしてほしい、この人に必ず残したい」ということであれば、遺言書を作成する必要があります。
本当に「一人」である人のために~「契約」で死亡後の面倒を託す
上では、「単身者ではあるものの、遠い親族がいる」というケースを想定してお話してきました。
それでは、「本当に『一人』であり、親族もいない」の場合はどうすればよいのでしょうか。
このようなケースでは、「契約」によって死後の整理をお願いするのがよいでしょう。
死後事務委任契約
死後事務委任契約とは、「自分が亡くなった後の整理をお願いします」という契約です。
死後事務委任契約を結ぶことで、
- 葬儀や埋葬およびその方法
- 行政手続き
- 生前に使っていたサービスの解約や、ライフラインの解約、また賃貸物件に住んでいた場合はその解約
- SNSやパソコンの個人情報の削除
- 一緒に住んでいたペットの環境整備
をお願いすることができます。
弁護士などの専門職とこの死後事務委任契約を結んでおくことで、「自分の最後の整理」を任すことができます。
任意後見人
死後事務委任契約と合わせて知っておきたいのが、「任意後見人」です。
「自分で自分のことができる状態のままで亡くなることができたらいいが、認知症などになったらどうしよう」という心配は、多くの人が抱えているものです。
任意後見人は、そのような不安に寄り添うものです。
任意後見人を結んでおくと、認知症になって自分で判断ができなくなっても、財産の管理や入院・入居の手続き、賃貸契約に関する作業などをしてもらうことができます。この任意後見人は成人であればだれでもなることができますが、身よりのない人の場合は、弁護士などに頼むのがよいでしょう。
なお任意後見人と死後事務委任契約は、似ているようで違うものです。任意後見人は「その人が亡くなるまで」しか効力を発揮しません。つまり、「亡くなった後のこと」は任意後見人の職務の範疇外なので、死後の整理を頼みたいのであれば、死後事務委任契約を結ぶ必要があります。
また、場合によっては身元保証人サービスや、見回りサービスも頼むとよいでしょう。
補足:子どもなし、きょうだいなし、最後はどうなる?
「天涯孤独、私には残すものがないから終活は関係ない」とお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、これまでお話ししてきたようにおひとりさまだとしても、終活は必要です。
そして、人が亡くなるタイミングは、だれも予想しきることができません。「まだまだ健康で若いから、おいおい終活のことを考えていくことにしよう」としていた人が突然亡くなることもありますし、施設に入居して長くだれとも連絡が取れていない状況でなくなることもあります。
このような場合、亡くなっていることを確認した人が、「亡くなった人に家族・親族はいないか」を探すことになります。そして、家族・親族がいないもしくは引き取りを拒否された場合は、地域の火葬場で火葬されることになります。そしてその後、公営墓地の合同墓に入れて弔われることになります。
なお、これは「引き継ぐ側の話」なのですが、法定相続人(子どもや孫などの直系卑属・親や祖父母などの直系尊属・兄弟姉妹・甥姪)の立場の場合、引き取りを拒否したからといって遺産の相続を放棄したことにはなりません。引き取りを拒否しても遺産は相続できますし、遺産の相続も拒否したいという場合は別途相続放棄の手続きが必要になります。
すべての人に、いつかは訪れる「老い」と「死」。そのために今からしっかり準備をしておきたいものですね。
出典:総務省「令和2年国勢調査 人口等基本集計結果 結果の概要」p30
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