昔と現在では、遺産・遺品のかたちも違ってきています。そのなかでも特筆すべきことは、デジタル遺産・デジタル遺品が、遺産・遺品のなかに入ってきたことでしょう。
ここでは「デジタル遺産・デジタル遺品とは何か」「その確認方法」「自分が『残していく立場』になる前にできること」を解説していきます。
※厳密には、デジタル遺産とデジタル遺品は意味が異なるものです。そのため原則としては「デジタル遺産・デジタル遺品」とすべきですが、本稿ではこの2つを総合して「デジタル遺産」としています。
デジタル遺産ってどんなもの?大きく3つに分けられる
デジタル遺産とは、亡くなった人がコンピューターやデータで保管していた遺産のことを指す言葉です。
従来のような紙媒体ではなく、パソコンやスマホの中に入っていることが多いため、残された家族が確認しにくいのがもっとも大きな特徴です。
さて、このデジタル遺産は、下記の3つに大別されています。
- 金銭的なもの
- 思い出に関するもの
- 他者との繋がりに関するもの
それぞれ見ていきましょう。
金銭的なもの
ネットバンキングやネット証券などの金融資産は、デジタル遺産のなかでも特に遺産分割の際に重要になるものです。
またこれ以外にも、電子マネーの残高や、通販サイトでのポイント、多額のマイレージなどもデジタル遺産にあたります。
思い出に関するもの
写真や動画など、「思い出に関するもの」もまた、デジタル遺産のうちのひとつだといえるでしょう。
現在の80代の場合は、「基本的には紙媒体で残している」「ほぼデジタルに移行している」「古い写真は紙媒体で残っているが、近年のものはデジタル管理である」などのように、人によって写真・動画の保存方法が大きく異なっています。
他者との繋がりに関するもの
SNSのアカウントや、ブログサービスなどは、「他者との繋がりに関するデジタル遺産である」といえるでしょう。
たとえばLINEのアカウントや、フェイスブック・X・インスタグラムなどのアカウントがこれにあたります。
これは「思い出に関するもの」とは似て非なる性質があります。写真や動画は基本的には個人で完結するものですが、こちらの場合は「だれかとリアルタイムで繋がっているもの」であるからです。
デジタル遺産・デジタル遺品の確認方法について
次の項目で詳しく触れますが、デジタル遺産は「残していく側」がエンディングノートなどに記しておくことで残された家族は非常に対処しやすくなります。では、エンディングノートなどがなかった場合(見つけられなかった/作っていなかった/突然亡くなったなど)はどうすればよいのでしょうか。
ここからは、デジタル遺産の確認方法について解説していきます。
金銭的なもの
デジタル遺産のなかでも金銭的なものは、非常に重要度と危険性が高いものです。
後から見つかった場合は相続協議のやり直しに発展しかねませんし、最悪の場合は負の財産(借金など。遺産放棄の手続きができるのは、遺産の相続があったと知ったときから原則3か月内に限られる)を引き継ぐことになってしまう可能性もあるからです。
デジタル遺産の有無を確認するためには、まずはクレジットカードや口座明細の確認を行いましょう。
「スマホに情報が入っているようだが、パスワードが分からなくて確認できない」などの場合は、まずは弁護士に相談しましょう。デジタル遺品業者にパスワードの突破を依頼する方法もないわけではありませんが、これは法律上の解釈がやや難しい部分でもあるため、弁護士に相談した方が確実です。
思い出に関するもの
家族で共有しているデータフォルダや、パソコンなどで「写真」などのファイルがあるようならばまずはそれを確認します。
このようなフォルダがない場合でも、クラウドに残っている可能性があるのでそちらも確認しましょう。
また、故人がブログやSNSをしていた場合、そのアカウントに写真が掲載・保存されている可能性があるので、それも確認します。
他者との繋がりに関するもの
スマホを使っている人なら、SNSには常時ログインの状態になっている可能性が極めて高いため、まずはそれを確認しましょう。スマホのアイコンから直接飛んでみると、手間がかかりません。
現在SNSを使っている人のなかには、「リアルでの付き合いはないが(あるいは直接会わなくなって久しいが)、SNS上での付き合いが20年近くにもなる友人・知人がいる」という人も多いかと思われます。このようにオンライン上での付き合いのあった、しかしリアルに生死情報を知れる立場にはない人のために、「このアカウントの持ち主は、〇月×日に永眠した」などの告知をするのもひとつの方法です。場合によってはその人たちから、家族が知らなかった故人のエピソードや、故人の古い写真などが寄せられるかもしれません。
なお、アカウントの持ち主の死亡によるアカウント削除は、専用のフォームから受け付けているSNSが多いといえます。削除を希望する場合は、各SNSの規約に従い、削除申請を行いましょう。
「その日」の前にできること
デジタル遺産は従来型の遺産とは異なり、残された家族にとっては確認が非常に難しいものです。また確認を行いにくいがゆえのトラブルなどが起こりやすい分野でもあります。
そのため、個々人が、「その日」に向けてきちんと準備をしておくことが必要です。「そこにあること」を家族が知られる状態にあるようにすることで、デジタル遺産の処分・回収は格段に楽になります。
金銭的なもの
使っていない銀行口座などの、解約できるものは解約をします。なおこのときには、合わせて使っていないサブスクも解約してしまうとよいでしょう。
「現在使っていて、解約が難しい」という者に関しては、エンディングノートに記載しておきます。「この人にこの遺産を渡したい」などの希望も、合わせて記しておくことをおすすめします。ただしエンディングノートには法的拘束力はないので、遺産の行方を確実に指定したいのであれば、遺言書を作る必要があります。
思い出に関するもの
みんなで共有できるフォルダに入れておくと、亡くなった後もご家族がその写真で思い出を偲ぶことができます。パソコンなどに保存している場合は、これもエンディングノートに「〇〇という名前のフォルダに保存してある」と書いておくとよいでしょう。
ただし、一番確実なのは残したい写真をプリントアウトしておくことです。
他者との繋がりに関するもの
エンディングノートに利用しているものとパスワード、IDなどを記載しておきます。こうすれば、後で家族がログイン→SNSで付き合いのあった人に訃報を知らせることができます。
なおこのときには、
- 亡くなったときにしてほしいコメント
- そこに登録されている人とどのような繋がりがあったか、また続柄
- そのアカウントを残してほしいのか、削除してほしいのか、削除してほしい場合はどれくらいの期間をめどとして削除してほしいか
なども合わせて記しておくとよりよいでしょう。
デジタル遺産は、従来型の遺産・遺品とはその性質が異なるものです。そのため、生前に自分自身の手でしっかり管理・整理しておくことが原則です。
だれにでも「その日」は訪れます。だからこそ、「その日」が来たときに、悲しみのなかにあるご家族の手間を極力減らせるように準備しておく必要があります。
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