現金の相続は簡単にできても、家の相続はそうは簡単にはいきそうにないという方が大勢います。相続はただでさえストレスなのに、親族でモメてこれ以上ストレスを増やしたくないですよね。そんな方たちのために家の相続手続きや注意点についてご説明いたします。
家の相続に必要な書類と手続き
家の相続とは、家の相続をする時、当然ですが建物についてはそっくりそのままもらうことができます。
ただし家の所有者の名前(名義)を変える必要があります。誰がその家の所有者かという情報は法務局にすでに記録されていて、これは建物の不動産登記とも言います。法務局は民間企業ではなく国の管理下にありますから、所有権を証明してくれる機関としてはこれ以上のものはありません。
この法務局の証明により、他の人が「この家は自分のものだ」と勝手に主張することを防ぐことができます。
逆に登記がされていないと、家の所有者としての証明を第三者にすることはできません。ちなみにこの登記は絶対にしなければならない義務ではありませんので、まれに登記されていない家もあります。しかしほとんどの場合、家の名義を変更することは必要となってきます。
名義変更、相続登記
ところで家の相続のことを名義変更もしくは相続登記と言うのをどこかでお聞きになったことがあるかもしれません。
この名義変更と相続登記というのはどこが違うのでしょうか。答えは、どちらも同じことを指しています。一言でいうと、世間一般で使われている言い方が名義変更で、役所や法律の専門家が使う正式な名称が相続登記です。ですからどちらも正しい言い方です。
実際の手続き
では実際の手続きの説明に移ります。
相続財産の調査、相続人の調査
故人(被相続人)が所有されていた財産のリストを作りましょう。
特に銀行預金についてはよく調べてください。あちこちの引き出しを調べるだけでは不十分かもしれません。最近ではネット銀行を利用する人も多いので、通帳そのものがない場合もあるのです。また、相続人が誰なのかを調査する必要もあります。過去の除籍や原戸籍をすべて調べて確認し、法定相続人を確定します。
遺言書の確認
次に遺言書の有無を確認しなければなりません。
自分だけで探して見つからない場合、他の相続人にも聞いてみましょう。また金庫や貸金庫以外にも家具の中などを可能な範囲で探してみましょう。もし遺言書があるならば、基本的にはその内容に沿って家も含めた財産を分割することになります。遺言書が無いことを確認してはじめて次のステップへと進みます。
遺産分割協議
遺言書がない場合は遺産分割協議をしなければなりません。
家族に残した財産が「家だけ」という人は恐らくいないでしょう。少なくともいくらかの現金はあるでしょうし、土地などもあるかもしれません。そうした財産を誰がどのくらいもらうかを相続人同士で話し合う必要があります。
誰がどれくらいもらえばいいのでしょうか?
争いにはならないでしょうか?そうしたことが起こると見越して、目安となる配分(法定相続分)が民法で定められています。基本的な法定相続分は以下の通りです。
- 配偶者と子供が相続人の場合、配偶者が1/2 、子供全員で1/2を分割
- 子供や孫がおらず、配偶者と直系尊属(亡くなった方の両親や祖父母)が相続人の場合は、 配偶者が2/3、直系尊属全員で1/3分割
- 子供、孫、直系尊属がおらず、配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合は、 配偶者が3/4、兄弟姉妹全員で1/4を分割
子供、直系尊属、兄弟姉妹が2人以上いるときは、原則として均等に分けます。
ただし、民法で定められているこの法定相続分は、相続人間で分割案の合意ができなかったときのためのあくまで「提案」であり、必ずしもこの相続分通りに遺産分割をしなければならないわけではないので誤解のないようにしてください。相続人全員が納得のいくまでじっくりと話し合いをしてください。もし一回で終わらなければ、二度、三度かけても大丈夫です。相続人全員が納得のいかないまま先に進めると、将来的に問題がさらに大きくなります。
遺産分割協議書、遺産分割協議証明書
話し合いが終わったら、その内容を書面にします。
通常は「遺産分割協議書」を作成します。大きな財産を動かす非常に重要な書類ですので、押印の際には実印を用います。印鑑証明書と同一のものか、改めて確認なさってください。この書類は“協議”という名前がついていますが、わざわざ一堂に会して書類を作成する必要はありません。一人ずつ署名押印し、持ち回りにする形にしても大丈夫です。
ただこの遺産分割協議書は難点もあります。
相続人たちが日本全国に散らばっている場合は、郵便を何度も使い一周するだけでも大変です。さらに、相続人の数が10人、20人となってくるとさらに大変で、協議書が元に戻ってくるまでに数か月かかってしまう、ということにもなりかねません。
そうならないために遺産分割協議証明書を使う方法が有効です。遺産分割協議証明書には署名押印の欄が一人分しかありません。それを相続人全員に送ります。すべての書面に各相続人が署名押印すれば、遺産分割協議書と同じ効力を持ちます。専門家たちが家屋の登記で時々使う方法ですが、一般にはほとんど知られていませんのでぜひ覚えておいてください。
相続登記
登記申請手続は相続人全員で申請する必要があります。
しかし実際には、相続人が複数いる場合、全員で申請することはほとんどありません。その場合、委任状を使って相続人の代表者に手続きを委任します。申請先はその家の住所を管轄する登記所となります。管轄がどこかわからなければ事前に尋ねるとよいでしょう。なお、申請の方法は法務局の窓口へ書類を持参する方法だけではありません。郵送もできますし、オンライン申請も可能です。
必要な書類
相続にかかる登記申請に必要な書類は以下の通りです。
- 登記申請書
- 委任状(代理人申請の場合)
- 亡くなった方(被相続人)の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本
- 亡くなった方の除票
- 相続人全員の現在の戸籍謄本
- 遺産分割協議書、または遺産分割協議証明書
- 相続関係説明図
- 相続人全員の印鑑証明書
- 不動産を取得する相続人の住民票の写し(役所の窓口で必ず「本籍地入りのもの」とお願いしてください)、または戸籍の附票
- 固定資産税評価証明書
- 登記事項証明書
以上に加えて、法務局に納める登録免許税が必要です。金額は固定資産評価額の0.4%となります。
元々登記がされていない場合
法務局に登記されていない家(未登記家屋)を相続した場合には、役所への届出が必要です。届出には「未登記家屋所有者変更届」、新しい所有者の実印、ならびに印鑑証明が必要となります。固定資産税については手続きをした年の翌年度から所有者が変わります。
家を相続した場合の相続税
家を相続した場合の相続税は、家の価格だけでなく財産の総額が関係してきます。相続税の申告期限は亡くなってから10か月間ですので、早めに進めるようにしましょう。相続税の総額は次のように計算します。
最初に課税価格の合計額を計算します。その計算方法はこれだけで一つの記事が必要ですので具体的な説明は控えます。
課税価格の合計額 - 基礎控除額(3000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)= 課税遺産総額
課税遺産総額を、法定相続人が法定相続分に従って取得したものと仮定して相続人それぞれの取得金額を計算します。
課税遺産総額× 各法定相続人の法定相続分 = 法定相続人それぞれの取得金額
それに税率をかけて、相続税の総額の基となる税額を出します。相続税の税率についての説明は省略いたします。
法定相続人それぞれの取得金額× 税率 = それぞれの税額
それぞれの税額を合計すると、相続税の総額となります。
最後に、相続税の総額を、それぞれの課税価格のパーセントに応じて割り、相続人ごとの税額を出します。
相続税の総額× 各人の課税価格 ÷ 課税価格の合計額 = 各相続人の税額
平成6年1月1日から平成26年12月31日までの間に被相続人が亡くなった場合の基礎控除額は、次のようになりますのでご注意ください。基礎控除額(5000万円 + 1000万円 × 法定相続人の数)。また、相続税に関することは他の様々な要素が関係してきます。一概に言えないこともありますので、お近くの税務署で相談なさるか、税理士相談などを活用されるとよいでしょう。
家を相続する場合に知っておきたいこと
残された財産のうちに現金があまりなく、財産の大部分が家だという場合はどうすればよいのでしょうか。家をバラバラに分けることはできませんし、かといって誰か一人が家をまるまる相続するなら不公平が生じます。こんな時は使える分割方法がいくつかありますのでご紹介いたします。
代償分割
相続人の誰か一人が家を相続し、その代わりに他の相続人に現金を払うことによって埋め合わせをする方法です。専門的な話になりますが、あえて配偶者がすべての不動産を相続することで配偶者控除が利用でき、その結果として大きく節税ができるというメリットもあります。
換価分割
財産の家を相続人の誰も欲しくないという場合には、家を売却しそのお金を相続人で公平に分けるという方法があります。固定資産税を毎年誰が払っていくかという問題も同時に解消されます。
共有分割
単独名義を共有名義に変えて、相続人全員で家を共有する方法です。
持ち分は法定相続分どおりにしてもしなくてもかまいません。これなら家も手放さず住みますし、何より簡単な方法なので、一番初めに思いつく方法かもしれません。しかしデメリットもあります。一人だけの意志では売却もできませんし、将来的にはおそらくさらに難しい遺産分割協議が待っています。問題の先送りになる場合もあるので慎重に選ぶことが必要です。
家を相続する際の注意点
相続がいざ始まり不動産の名義を調べてみたら、父親ではなく祖父の名前になっていた!というのはよくあるケースです。このように長い間相続登記がされずに放置されていた場合はどうすればよいのでしょうか。
最初におじいさんの亡くなった時点での法定相続人を調べる必要があります。
自分の父親だけが相続人なら良いのですが、父親に兄弟姉妹いる場合、その人たちも相続人となります。そして、その人たちも亡くなっている場合は、さらにその子供や孫に相続権が発生しますので、できるだけ早い対応をする必要があります。
まとめ
相続税の申告とは違い、不動産の相続登記には期限がありません。
そのため必要な手続きをせずに放置する人がおられるのも現実です。しかしこのことが原因で多種多様な問題が実際に起きています。解決しにくい問題を将来の世代に残さないよう、ぜひとも早めに手続きをしましょう。もしどうしても手に負えなければ、専門家の力を借りることもお勧めしたいと思います。
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