被相続人が住んでいた家を相続した場合、気になるのはその評価額や税金の計算方法です。今回は家の相続における評価額や税金について詳しく解説します。
相続における家とは
家とは、居住用の不動産のことです。
被相続人が生前に所有していた不動産は、相続財産となります。
家を相続する状況として、
・1人暮らしの父が亡くなって子供が相続する場合
・夫婦の共有する家で夫が亡くなり、妻が夫の持ち分を相続する場合
などが考えられますが、いずれも相続税の課税対象となります。
それでは家を相続した場合、家の評価額や税金はどうなるのでしょうか。
家屋と土地は別々に評価される
相続税法上、家屋と土地はそれぞれ評価方法が異なります。
そのため相続税を計算する際は、家屋と土地を別々に評価することが必要です。
評価額が高ければ高いほど、相続税も高額となります。
今回は一般的に多いパターンとして、持ち家と自用の宅地を相続した場合の評価額と税金の計算方法を解説します。
家の相続における家の評価方法
持ち家は自用家屋と呼ばれ、その評価額は固定資産評価額×1.0で計算されます。
つまり固定資産税の通知書に記載されている固定資産税評価額が、そのまま相続税法上の評価額となるのです。
ちなみに固定資産税の評価額は3年に1度、1月1日を基準に市町村による評価替えが行われ3月か4月頃に公表されます。自治体によっては毎年評価替えを行うところもあります。
宅地の評価額
宅地の評価方法は大きく分けると
・路線価方式
・倍率方式
の2つで、その宅地の面する路線に路線価が付されていれば路線価方式、路線価がなければ倍率方式を適用して評価します。
路線価方式とは
路線価とは相続税や贈与税を計算するための特別に算出された、道路に対する価値のことです。
毎年1月1日を基準して計算され7月1日に国税庁から発表されます。
路線価方式では路線価の値を利用して、
・土地が路線(道路)に面している状況
・土地の形状
・地積(土地の面積)
等から評価額を計算します。
基本的に住宅街には路線価が存在するため、宅地のほとんどが路線価方式で計算されることになります。
倍率方式
倍率方式とは、国税局が一定の地域ごとに定めた倍率をその土地の固定資産税評価額にかけて評価する方式のことです。
路線価がない土地を評価する際に、この倍率方式が使われます。
家の相続における税金の計算方法
相続税の計算方法とは、家の相続における税金の計算ですが、相続税は相続財産ごとに税金を計算しているわけではないため、家に対する税金のみを抽出することはできません。
ただし宅地を相続する場合の税計算において、ぜひ知っておいた方が良い税金の特例があります。
それは「小規模宅地等の特例」と呼ばれるものです。
この小規模宅地等の特例を説明する前に、簡単に相続税の計算方法をご紹介します。
相続税の計算方法は、大きく分けると次の3つのステップになります。
1.全ての相続財産を合計する
2.基礎控除後の1の相続財産を法定相続分で法定相続人ごとに分割し、相続税を計算する
3.2の税額合計を実際の相続人の相続分で比例配分し、各相続人の納付税額を計算する
小規模宅地等の特例は、1において宅地の相続税評価額を減少させる措置です。
評価額を減少させることで、2で計算される全体の税額が下がるため最終的に各相続人の納付税額が減額される仕組みとなります。
つまり小規模宅地等の特例を使えば、家を相続した人だけでなく相続人全員の税金を安くする事が可能というわけです。
小規模宅地等の特例とは
小規模宅地等の特例とは、被相続人などが事業用あるいは居住用に使用していた宅地の評価額を減額するものです。
今回は居住用の宅地なので小規模宅地等の特例のうち「特定居住用宅地等」の適用が検討されることになります。「特定居住用宅地等」を適用するには後述する要件を満たさなければなりません。
もし要件を満たし特例を適用することができれば、その宅地の評価額は地積330㎡の範囲内が80%減額となります。
つまり、地積が330㎡以下であれば評価額を1/5にまで抑えられるのです。
なお、小規模宅地等の特例を適用するには相続税の申告が要件となります。
特例で減額したことにより相続税額が0円になったとしても、相続税の申告は必要です。
小規模宅地等の評価減の特例を適用するには
小規模宅地等の評価減の特例を適用するための宅地の要件は、下記の3つで全てを満たす必要があります。
- 被相続人又は被相続人と生計を一にする親族の、事業用または居住用の宅地であること(宅地の名義人は被相続人)
- 建物または構築物の敷地であること
- 申告期限までに遺産分割が終了していること(申告期限から3年以内に分割が確定すれば適用できる)
そして「特定居住用宅地等」による80%の評価減を適用するためには、さらに下記の要件のいずれかを満たす必要があります。
・被相続人の配偶者が相続する場合
・被相続人と同居していた親族が相続し、申告期限まで所有・居住する場合
・上記2要件に該当者がなければ、別居親族(過去3年以内に国内にマイホームなし)が申告期限までその宅地を所有する 場合
・被相続人と生計を一にしていた親族が居住していた宅地をその親族が取得し、申告期限まで所有・居住する場合(例・使用貸借で子どもが居住していた宅地など)
少し複雑なのでまとめると、家を相続する場合に特例が適用されるポイントは、相続開始前の用途が「相続人の居住用」か「生計一親族の居住用」かで分岐します。
被相続人の居住用であれば、
① 配偶者、同居親族のいずれかが相続すること
② ①がいなければ、別居親族(3年間マイホームなし)が相続すること
③ 配偶者は無条件、同居親族は所有と居住が条件、別居親族は所有が条件
一方、被相続人名義の土地に生計一親族が居住する場合は、
・配偶者、その生計一親族(使用貸借による)が相続すること
・配偶者は無条件、生計一親族は所有・居住が条件
となります。
登録免許税の計算方法
家を相続した場合に発生するもう一つの税金が登録免許税です。
登録免許税とは、相続登記に対する税金になります。
税額は固定資産税評価額×0.4%です。
相続登記の際に収入印紙で法務局に納める必要があります。
家の相続での注意点
相続登記は必ず行う
家を相続した場合は、土地と建物の所有権移転登記を行う必要があります。
登記は法律上の義務ではありませんが、登記をするまでその不動産は事実上、法定相続人の共有状態です。万一その間に別の相続が発生すれば、その相続人にまで不動産の権利が及んでしまいます。
この状態で登記や他人へ売却を行おうとすると、全ての相続人と連絡を取らなければならなくなりません。関係者が増えれば中には協力的でない人もでてくる可能性があります。
そのため相続時は、速やかに登記まで終わらせる必要があります。
登記にかかる費用
登記には、登録免許税以外にも登記事項証明書や除籍謄本の取得など相続登記の準備のための費用がかかります。
登記事項証明書は1通で600円ほどで除籍謄本は1通で750円ほどです。
また司法書士に登記手続きを代行してもらう場合は、その報酬も支払わなければなりません。
ローンが残っている場合
被相続人が抱えていた負債も相続財産となり、相続人が返済義務を負います。
住宅ローンの場合は、まず団体信用生命保険に加入していないか確認しましょう。
団体信用生命保険とは、ローンを借入れる際に加入する生命保険です。
契約者が死亡した際に残債を保険金と相殺できるように設定されているため、まずは保険会社に連絡して契約者が死亡した旨を伝えましょう。
共同名義人とする場合の注意点
不動産を相続する場合、複数の相続人が共同して不動産の名義人となることも可能です。
しかし、そうすると権利関係は相続が発生する度に複雑化し、売却をするにも権利者全員の承認を得なければならない等の深刻な問題が生じます。
そのため安易に共同名義とせず、可能な限り単独名義で相続をしましょう。
共同名義人にもメリットはある
共同名義にすることで、所得税法のマイホーム特例の活用枠を広げることが可能です。
マイホーム特例とは一定要件の下で居住用財産を他人に売却した場合、その譲渡所得から3,000万円を控除できる特例になります。
通常、不動産を売却した場合は譲渡所得に対し所有期間に応じて15%か30%の税金がかかります。さらに言えば、課税所得金額により変化する住民税や国民健康保険料にも影響します。
ところが、譲渡所得が3,000万円以下であればマイホーム特例を適用することにより所得税は非課税となり、住民税や国民健康保険への影響もなくなります。
さらに共有名義の場合は、合計で3,000万円ではなく共有者一人につき最高3,000万円の控除が認められます。
つまり共有名義人のままマイホーム特例を活用すれば、所得税の非課税枠を2倍、3倍にすることが可能となるのです。
わざわざ共有名義とするのは登録免許税がかかるため検討が必要ですが、もし共同名義の土地を所有している場合はこうした特例があることは知っておきましょう。
生前贈与で相続税対策
婚姻期間が20年以上の夫婦であれば居住用不動産の贈与は2,000万円(基礎控除と合わせれば2,110万円)まで非課税で行うことが可能です。
この贈与は持ち分割合での贈与も認められます。
そのため配偶者への生前贈与で持ち分を減らすことにより、一次相続における相続財産を基礎控除以下に調整するなどの活用もできます。
二次相続にかかる税金の対策は以下の記事で解説しているのでご参照ください。
まとめ
家の相続についてまとめると
- 家屋の評価額は固定資産税評価額、宅地は路線価方式か倍率方式で算出する
- 小規模宅地等の評価減の特例を利用すれば相続税評価額は5分の1になる
- 家の相続では相続税のほか登録免許税も発生する
となります。小規模宅地等の特例が適用できるかは納付税額に大きく影響しますので、現在の状況で適用できるかぜひ参考にして下さい。
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